悪魔達の侵略4(20130104)


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緊急の任務が発令されたのは、ほんの数分前だった。
いつも通りの細かな任務をこなしていた三人のうち、男一人がヘリコプターでの破壊任務を命じられる。
仕方なく、部下二人に遂行中の任務を任せ、男は帽子を押さえながらヘリコプターに搭乗した。

「ミスターエージェント、機内は禁煙ですよ。そこにあるケースが見えませんか?」
現場に着く前に一服しようと、隠れてタバコを口に咥(くわ)えて火をつけたエージェントだが、オペレーターからの指摘で渋々タバコの火を消し、携帯灰皿に詰め込んでからそれをスーツのポケットにしまった。
緊急任務と、そう言われて何も準備の無いままヘリコプターに乗せられたが、どうやら床に設置された武器ケースからして、このヘリコプターから狙撃して対象を破壊しろと言うことらしい。
詳細は追加の指示を待っている状態だった。
搭乗した機体は「UH-60ブラックホーク」をベースに改良を加えられた、エージェントが所属する組織の所持するヘリコプターの中で一番の移動性能を持つ機体だ。
移動や輸送に特化しているため、機体に搭載されている攻撃手段は最小限のものしかない。
到着までの時間を待つエージェントが床に置かれた二つのケースの一つを開けると、そこには「FIM-92スティンガー」と言う携帯式のミサイルが入っていた。
こちらもヘリ同様、基本のスティンガーミサイルをベースに、組織の開発部によっていくつかの調整が加えられている様だった。
もう一つのケースにはミサイル弾が二発。
「オペレーター。こんな武器積んで、一体俺は何と戦うんだ?」
エージェントはマイクを通して、操縦室のオペレーターに問う。
「さぁ? もうすぐ到着しますが、目的地は森のようです」
「森だと? 森林破壊にも程があるぞ」
エージェントがそう言ってケースを閉じると、ちょうどそのタイミングでオペレーターが言った。
「ミスターエージェント、現場に到着します! 扉を開放しますのでご注意を!」
すぐに、エージェントが扉へ目をやる。
自動でスライドして開いたその先には――見たこともない巨大な薔薇の花がそびえていた。
エージェントは思わず目を奪われる。
「なっ――」
森の中心部に飛び出した大樹。
それは、一輪の薔薇の花のようであり、だがその大樹の幹は呼吸するように不気味な動きを繰り返している。
「なんだ、この樹は!?」
「ミスターエージェント、上層部から通信です!」
オペレーターが通信機を操作すると、通信が組織からの無線へ切り替わる。
「エージェント、対象を確認したか?」
「あぁ。この植物は一体何だ? ただの樹じゃなさそうだな」
「お前が詳しく知る必要は無い。すぐにそれを狙撃するんだ」
「……わかった」
上層部の指示通り、エージェントはすぐにスティンガーにミサイル弾を装填する。
「オペレーター、聞こえるか? もう少し森から離れて高度を落としてくれ」
「了解」
揺れるヘリコプターの中で、エージェントはスティンガーミサイルのスコープからその樹に狙いを定めた。
「悪いな」
と、一言呟くと同時に発射スイッチを押す。
弾は真っ直ぐにクレイターローズへ向かって発射された。

一発目が命中。
見事にクレイターローズの幹の真ん中を貫いて刺さり、爆発する。
炎上するクレイターローズは、本体の樹の幹を守ろうと、全ての蔦と根を本体へ戻した。
だが、その火災を防ぐことはできない。
エージェントの放ったミサイルは、魔女、合成師、魔界の力以外の、完全な物理的な攻撃である。
ただの人間が放った攻撃が、魔力など帯びる訳もなく、それをクレイターローズが吸収する事はできなかった。
炎上を止めるべく、全ての蔦と根が幹を覆い隠したところで、エージェントはヘリコプターから二発目のミサイルを発射した。
一発目と同様に蔦と根の集まったクレイターローズの中心を貫き、爆破させる。
炎を防げなくなったクレイターローズは、炎上と共にまとわり付いていたブラッドローズを炎に乗せ、紅い花吹雪が森一帯に降り注いだ。
止まることなく燃え上がるそれを見てエージェントはタバコに火をつけた。
「ですから、機内は禁煙――」
「任務完了だ、行ってくれ」
「……了解」
エージェントの喫煙を止めることなく、ヘリコプターは森から離れていく。
「すまないが、任務でな」
炎を上げ続けるクレイターローズを見て、エージェントはタバコの煙を大きく吐き出して呟いた。
「だが……花はいつか枯れるものだ」
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