悪魔達の侵略2(20130104)


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『僕も父さんみたいな強い合成師になる!』
『そうだ! いいぞ、クレイル! いつかお前は俺よりも強い合成師になれるぞ!』

クレイルは、懐かしい会話を思い出す。
(あぁ、そんなことも言ったっけ……フフフ……)
目を開くと、何もない白い天地がただひたすら広がっていた。
(僕は……僕の命はもう尽きた後なのか?)
クレイターローズに捕捉され、石化させられた所まで、はっきり覚えている。
何故、突然この様な場所へ?
そう思ったクレイルが身体を動かそうとして、何者かの気配を背後に感じ取った。
振り返ろうとした、瞬間
「何をかっこつけて、思いっきり捕まってんだ、お前は」
聞き覚えのある、懐かしい声を聞いて思わず身体が硬直する。
「父、さん?」
反射的に、声だけを漏らしたクレイルに、その声の主は笑いながら答えた。
「あぁ。久しぶりだなクレイル。デカくなりやがって」
緊張感のない、その声を聞いて、クレイルはようやく背後へ振り返った。

森の中で思い出した父親である「マグナ」の記憶は、次々に流れ込んでくる。
肩まで伸びる、クセのある真っ赤な髪の毛に、燃えるような赤い瞳。
そのおかしな髪のクセはクレイルにはなく、二人の妹に遺伝している。
「よう」
「…………」
対面した途端、そう呼びかけられたクレイルは拍子抜けし、感動の再会とはならなかった。
「何をそんなに難しい顔してんだ」
「あなたは……」
「ん? 何だ?」
「いえ、何でもありません」
「何で敬語なんだよ……。お前、そういう所は母さんそっくりだな」
そう言って、笑ってみせるマグナだが、クレイルの表情は曇ったままだった。
そんなクレイルを見て、マグナはさらに話を続けた。
「結局、思ったとおりになっちまったな。俺の施した魔術程度じゃ、成長したお前に適わない。森と魔界からの魔力の影響が引き金になって、潜在してる力が記憶を操作した俺の魔術を無意識に解除して全て思い出したんだろう」
そう言って、マグナがクレイルの髪をぐしゃぐしゃに撫で回した。
「俺が言った通りだろ。流石は俺と母さんの息子だ」
温かくて大きな掌が、クレイルの記憶を蘇らせ、冷めた心もゆっくり溶かしていく。
ようやく撫でるのをやめたマグナは、今度は真剣な顔でクレイルに告げた。
「クレイル、頼みがあって会いに来た」
「頼み?」
クレイルを見て、頷いたマグナが続ける。
「魔獣グリーンブレイド、覚えてるな?」
「えぇ」
全ての元凶とも言えるその名を改めてマグナから聞かされ、クレイルはいつにも増して冷静になる。
「やつら、魔獣は一匹じゃない。魔界にはその他に何種類も魔獣が存在する。俺が魔界側に取り込まれた時、グリーンブレイドを消した所で、もう一体の魔獣が現れた」
「もう一体……あれほどの力を持つ魔獣が?」
「あぁ、だがそいつは予想以上の切れ者だった。俺がグリーンブレイドを消し、自分で自分を消した中、そいつは観察をしていた。グリーンブレイドの様に不完全なままの門をこじ開ける事はせず、後で発動するように仕込みやがったんだ」
それを聞いて、クレイルも既にその結果どうなったかを理解した。
「まさか、あのクレイターローズは……」
「そうだ。奴は俺が魔界側で消える時に、俺の持つ魔力を使って、誰にも気付かれないように、似たような森を探し、あの樹の魔獣をあの森に仕込んだ。そしてそれは短期間で成長を遂げた」
グリーンブレイドの様に、魔界側から一方的に抉(こ)じ開ける方法ではなく、両方から少しずつ、深く開通させて完全なる門を開放しようとしたのだろう。
結果、それは大成功だ。
さらに、クレイターローズが門番となっている為、最早誰も森には近づけない。
「……その魔獣とは?」
「あれは恐らく、グリーンブレイドよりも高い魔力を持つ、<レッドデスサイズ>だ。片腕は大鎌に変形している」
「レッドデスサイズ……」
「頼みがあるって言ったのは、何を隠そうそいつのことでな」
「レッドデスサイズを倒せ、と?」
「あぁ、これだけ大きな騒ぎがあれば、魔女たちも来るだろう。だが――」
「?」
「意を決して飛び込んで、相手に仕込ませてしまった結果、こんな大事に至っている。これは俺の失態だ。それに……レッドデスサイズには、僅かとは言え俺の持っていた魔力を使っている。お前の手で奴ごと消して欲しい」
「そんな……」
クレイルの表情が曇る。
「あ、勘違いするなよ。俺がレッドデスサイズに取り込まれてるわけじゃないからな」
「いえ、そんなことが僕にできるのでしょうか。もはや魔力を失って、自力でどうにも出来ないのに」
「出来るさ。じゃあ何で今、お前はこんな状況になってるんだ?」
「それは……」
すぐに答えないクレイルを見て、マグナは笑って言う。
「お前の事だ、家族を助けた俺の真似とか、そう言う心情で、レオルスを庇(かば)ったんだろ?」
「…………」
「いや、いいんだよそれで。こうなったとは言え正しい判断だった。レオルスを見捨ててパピメルを助けたとしても、それはきっと正しくない。だけど、もう繰り返さなくていいんだ」
「繰り返す……?」
「まぁ、なんだ。俺よりうまくやれってことだ。もうこれ以上家族に犠牲が出るのはごめんだからな」
マグナはそう言って、クレイルの肩を叩く。
「パピメルの傷も、クレイターローズも、あの事故で仕組まれていたものが今動き出している。あの事故は運命だと、俺はそう受け入れる。だがな……それに抗(あらが)ってもいいはずだろう」
「だとしても、僕一人ではどうにも――」
「一人じゃないさ。お前を助けようとしてる奴は、お前が思っている以上にいる。頼むクレイル。俺と同じにはなるな。運命だと言って、受け入れるな」
「僕は……」
「乗り越えろ、仕組まれていたこの宿命を。これ以上の犠牲が出る前に」
マグナの真剣な眼差しに、クレイルは大きく頷いた。
考えてみれば、やることはいつもと変わらない。
自分の好きな世界や大切な人物、それらを守るための戦いだ。
「パピメルは……」
「あぁ、パピメルにはイヴがついてる。もうすぐ会えるさ」
それは、レオルスに託した秘薬が無事成功して効いたと言う事だ。
聞いてクレイルは安堵(あんど)する。
「噂をすれば、だ」
「……?」
マグナが何もない天を指差して言う。
「お前を助けるために、三人が来たみたいだ。だがクレイターローズが厄介だな……これを破壊しない限りはお前に誰も近づけない」
マグナの言うとおり、クレイターローズの活動範囲である赤い霧は、既に森全体を覆っているため、石化したクレイルの周辺も魔力を吸うために襲いかかる蔦と根が蔓延(はびこ)っている。
無茶はしないでくれ、とクレイルは心の中でそう願った。
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