ドリーム&メモリーズ10(20121211)


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(父さん……今、僕に何をした……?)
「マグナ、何を!?」
気づいたラウロスが叫ぶ。
「頼みがあるのは、お前だけだ。ラウロス」
ラウロスがクレイルの肩をつかみ、その表情を見て驚愕する。
父を見る目の焦点が定まっていない。
立ったままの状態で、呼吸もしていないのかと思うほどに身体の動きが止まっている。
「まさか……」
「あぁ、今までの俺に関する記憶を……クレイルから消し去った」
(父さんが……!? 何故!?)
自分が父親を知らなかった訳でも、父親が家族を見捨てていた訳でもない。
クレイルは父親から、その記憶を全て消されていたのである。
「今までの俺の存在は消えて、適当に構築されて埋まっていくだろう。もちろん、綺麗に埋まることはない。いや、もしかしたら苦しめちまうかもしれないな……」
「何故だ、マグナ! この子は……クレイルは両親を失うんだぞ! その記憶まで消してしまって何になると言うんだ!?」
「だからこそ、さ……」
力なく笑い、動かない息子を見てマグナが言う。
「母親は魔獣の手によって殺された。だが、父はいなかった、助けにも来なかったんだ。失った大事な人は母だけだったと……子供を守るために戦って、いなくなったんだと思い出してもらえばそれで……。子供たちは父親を失っていない。いや、失うなどと言える様な価値のある人物ではなく、その存在がどうでもよくなる人物になってしまえば良いんだ。だからこいつらが失うのは、母親一人だけでいい……」
「そんな馬鹿な、親を失って気づかない訳が……」
「その頃には成長して、きっと今よりずっと大きくなってるだろ……。しかし、まいった。コイツは俺より才能を持ってやがる。もしかしたら、今の魔術も嘘みたいに解除されちまうかもしれねぇなぁ……」
「…………」
ラウロスもここへ来る前、クレイルの行動に驚かされた。
魔術の片鱗も教わっていないはずの子供が、何の前触れもなく魔術を駆使して森へ飛び込んだのだから。
無意識とは言え、力の使い方を間違えればそれは恐ろしい存在になりかねない。
「この子の……この兄妹の周囲は、どうするんだ」
ラウロスがマグナに問うと、マグナは苦しそうに答えた。
「頼みがあると、言っただろ。フラメルと……それから、もし覚えていそうならパピメルの記憶操作もお前に頼みたい」
「……保障は出来んぞ。お前と魔女の子供だ。俺の魔力で正しく操れるか分からない」
不安そうなラウロスに、マグナが小さく呟いた。
「やってくれるだろ……友よ」
それを聞いてラウロスが頷く。
「……あぁ」
「すまん……任せた」
その言葉を最後に、空中に捕らわれていたマグナの身体が沈んでいく。
「マグナ!!」
ラウロスが叫び、最後に手を取ろうとしたが、マグナの身体はそのまま吸い込まれて消えていった。
(……僕の記憶は全て……偽り……)
クレイルが知り得なかった真実がついに明らかになる。
記憶を消されてその場に立ち尽くす子供の自分を見るクレイルも、まるで足に鉄の枷(かせ)に固定されたかの様にその場から一切動けなかった。

魔界で生存できるのは魔界で生まれた存在だけ――つまり、マグナが生存する可能性は限りなくゼロに近い。
そして痕跡を残さず、と言う事は何らかの手段で魔界の中で自ら消失するつもりだろう。
最早、もう二度とこちらの世界に戻ることはない。
ラウロスは動かなくなったクレイルを担ぎ、森の外まで運んでいく。
まだ身体が動かないクレイルの目から、溢れる涙だけが止まらず、頬を伝って静かに地へ落ちていった。
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