ドリーム&メモリーズ7(20121211)


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イヴへの追撃に失敗し、逆に武器によって反撃を受けた魔獣が怒りを露(あらわ)にして大声で叫び、それを刺したマグナの右腕を掴んだ。
「コイツ……まだ倒れな――」
魔獣はマグナを掴んだ左手に力を込め、身体ごと持ち上げる。
魔獣はその場から距離を置くのか、それとも別の攻撃手段を持つのか。
何か行動を起こす魔獣の目論みに気付いたマグナが、左手に残された最後の薬品武器を刃に変え、首を切り落とそうとした。
魔獣の左肩から下は、イヴの攻撃によって吹き飛ばされていて腕はない。
掴んだ右腕に力を込めているため、今この瞬間魔獣が攻撃を防ぐ手段は皆無。
マグナの武器が魔獣の首へ刺さる――はずだった。
魔獣は斬撃が触れる瞬間、首を庇う様にして咄嗟に頭部を動かして、その口でマグナの武器を受け止めた。
当然、武器を受けた口と顎が裂ける。
だがその強靭な筋肉と骨はマグナの斬撃を止め、傷は首まで到達していない。
体液を滴らしながら、怒りに燃える鋭い眼がマグナを睨む。
読みきれなかった、魔獣のその執念。
やがて薬品武器が魔力を失い、空になった試験管が、音も無く静かにマグナの手から草原の上に落ちた。

(僕は、何を……!)
クレイルはほんの少し、一瞬だけとは言え父と母が生存できるのでは、と期待してしまった自分を責めた。
近くに殴れる物があったなら、それを殴り壊したい気分だった。
そしてその場でただ震えるだけの幼い自分を見て、どうしてそんなに無力なんだ、と睨みつけた。
自分が犠牲になれたなら、両親と共に戦えたなら、失うものは最小限で済んだかもしれない。
マグナと魔獣が攻防を繰り広げるすぐ側で、イヴがパピメルに触れて傷からの侵食を食い止める。
そしてマグナの背後、幼い兄妹の目の前で、イヴがゆっくりと地面へ倒れた。

最後の武器を失ったマグナを見て、魔獣がそのまま森へ引き返そうとする。
すると突然、魔獣が森と反対側へ顔を向け、何かに気付くとマグナを突き飛ばす様に掴んでいた手を離した。
マグナの着地と共に、魔獣が全速力で森の中に飛び込む。
魔獣の両足に刺さっていた薬品武器は既に消えている。
だがその傷は深く、血痕を残しながら森の奥へと素早く逃げていく。
魔獣は何故急に逃走したのか。
その行動をクレイルが理解したのは、マグナが森へ走り出したその時だった。
「ラウロス!」
マグナがそう叫んだ瞬間、倒れているイヴと兄妹の前に、ラウロスが着地した。
全員の視界外から姿を見せたラウロスはかなり上空から着地した様だが、魔術を発動させて落下の衝撃を分散させている。
魔獣はラウロスの接近を察知し、危機を感じて森の中へ身を隠したのである。
「子供たちを頼む」
マグナは走りながら一言そういい残し、魔獣を追って森の中へ飛び込んだ。
「おい、マグナ! 深追いはやめろ!」
(父さん! 追ってはいけない!)
ラウロスがそう叫んだ時には、既にマグナの姿は見えなかった。
(助けに行かなければ……すぐに……)
呆然と森を眺めるクレイル。
不意に、その身体が動いた。
(!?)
気が付けば、幼いクレイルが森の入り口に立ち、父の進んだ方向を見ている。
(そうだ。僕なら、そうする)
クレイルも幼い自分の横に並び、同じ視線の先を見つめる。
「よせクレイル! お前にどうにかできる相手じゃ――」
気付いたラウロスが放った言葉は、傷だらけの父を追う少年の耳には届かなかった。
「スピンテール――!」
「なっ!?」
ラウロスがクレイルを引き戻そうとして腕を掴もうとした瞬間、まだ幼い子供が、いつの間に学んだのか、魔術を使って森の中へ飛び込んだ。

森の中には入り口からずっと、魔獣とマグナがほぼ直線状に進んだ形跡がある。
幼い自分に歩幅を合わせる様に、魔術で地を蹴りながら移動し、終点を目指す。
そしてすぐにその光景は訪れた。
「父さ――」
「近づくな!」
ようやくたどり着き、援護するために飛び出した息子を、その父が拒絶した。
「父さん……?」
マグナはクレイルを自分の近くに寄せない様に、片手を突き出して止めさせる。
真っ直ぐと伸ばされ広げた掌からは謎の威圧感が放れていて、思わず少年の足が止まる。
身体を何かに捕らわれているのか、力を込めてゆっくりとクレイルの方へ向いた父の姿を見て、クレイルが絶句した。
父の身体は<半分しかない>
切断されている訳ではなく、身体半分が空間と一体化している。
おぞましい感覚が、それを見ている二人のクレイルを襲った。
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