秘境の魔女14(20121109)


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囁く声とは裏腹に、目の前の母親の形相は家族を愛する母ではなく、敵に対して怒りに震える魔女のそれだった。
「バシリス・クリシ――」
激昂したイヴが静かに唱えた一言の詠唱と共に、掴んでいた刃を通して魔獣に全力の魔力を注ぎ込んで攻撃する。
一瞬にして、魔獣の刃とそれを握っていた右腕・右肩までが吹き飛び、醜い翠の肉片は白く輝いて消えた。
「GUAAAAAA!!」
強力な魔力攻撃を受け、片腕を失った魔獣が激痛に大声を上げる。
だが、イヴにとってそれは予想外の展開だった。
彼女の最大魔力を持って、捕らえた状態で攻撃したなら、魔獣は跡形も無く消し飛んでいたはずである。
魔獣は驚異的な反射神経で、魔力が腕を伝った瞬間右腕を捨てて後ろへ退いていた。
流れる込む攻撃魔力に対抗しながら自らの身体を防御する様に傷口に魔力を施し、右肩のみを犠牲にして生き延びたのだ。
恐怖と憤怒の混ざり合った形相で目の前の魔女を睨む魔獣。
左手で失った右肩を抑えながら、何とかバランスを保ちながら後退し、逃げ帰るように森の中へ向かって飛び去った。
魔獣が離れたことを確認し、イヴがその場に倒れこむ。
美しい白の装いは、もはや見るに耐えないほど赤と翠に侵されていた。
「ママ!」
今まで必死に妹を庇っていたフラメルが、パピメルを抱きかかえながら倒れた母に近づく。
鮮血に染まりながら、魔女は力なく娘たちへ手を伸ばした。
「ごめんね、クレイル……フラメル、パピメル……」
母の手がパピメルの頭を撫でる。
直接注ぎ込まれた聖なる魔力は、パピメルの髪に侵食していた翠色の魔力を中和していく。
だが、既に定着してしまった色を完全に元の状態に回復させるには到らなかった。
翠色は徐々に薄められ、負の翠色は優しい浅葱色へと変化する。
やがてイヴの腕からは力が抜け、ごめんねと、最後に一言だけ呟いて草原の上に倒れた。
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