秘境の魔女6(20121109)


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案内されるままに、地下へと降りたクレイルとレオルス。
石で作られ、密閉されたその空間は、冷やりとした空気で満たされていた。
何にしても、魔術を使った<作業>をするために使われていることは容易に想像できる。
ティファレットはすぐに本棚へと向かい、一冊の本を手に取り中身を確認した。
「あったわ、これね。という事は……」
本を片手に、今度は道具の並べられた棚を眺め、何かを手に取る。
手に取ったそれを持ち、クレイルとレオルスへ開いた書に記載された秘薬の作成法を見せる。
「まずはこれを見て、どうやらこの秘薬で傷を回復できるようなの。だからこの道具を。<グラトンポット>よ」
「グラトンポット……実物を見るのは初めてです」
「使い方は簡単、最終的に材料はすべてここに入れればいいわ」
ティファレットが取り出したティーポットの様なそれは、ふたの中が闇に染まっている。
魔女の薬品合成用の道具で、必要な材料を必要な割合で混ぜ、出来上がった薬を注いでくれる優れものである。
ただし、その分余分に材料を使う。
余った分の材料は後で中から出てくるわけではなく、その<グラトンポット>自体の活動エネルギーとなるため吸収されてしまう。
とは言え少しでも余分があればどんな薬品でも正確に作れるものであるため、今回使わない手はないだろう。
クレイルがそれをティファレットから受け取る。
「それから……これの中から出てくるガーネットハーブが大量に必要になるわ」
ティファレットがそう言って棚から小さな箱を取り出す。
「……? それは?」
「通称<強欲のミミック>と言われている、低級の魔物よ。宝箱に擬態して獲物を取るんだけど、これにはもう獲物を捕獲できるような凶暴性はないわ」
説明するティファレットの手から、レオルスが箱を受け取る。
「こいつの中からそのハーブを取り出せばいいのか?」
「そういうこと。で、それの扱いなんだけど……ちょっと厄介なのよね」
ティファレットが一枚の紙をクレイルへ渡す。
「強欲のミミックの……増殖法?」
「えぇ、その一箱だけじゃハーブは一枚しか手に入らない。大量にハーブを回収するための増殖法と、回収法があるのよ」
クレイルは渡された紙を広げて、説明を読む。
1.持ち主が変わると、一度だけ箱の性質が3種類のいずれかに変化する
2.性質が変化した箱は、それぞれの欲を満たすことで開封できる
3.欲の種類は不明。ただし、開けようとする者の住む世界の何かを欲する傾向がある
4.欲を満たして開封した場合、開封した者に箱の中身を提供する。同時に、持ち主が変わる前のミミックへと戻り増殖する。
「レオルス、箱を見せてくれますか」
「ん? 持ち主が変わる……ってことは、既に変わってるのか?」
クレイルがレオルスから箱を受け取る。
「そのようですね、要求は……なるほど、既にこちらの世界に対応している」
そう言ってクレイルが箱をレオルスへと戻す。
「欲しがってるのは……って、鍵? なんじゃそりゃ?」
ミミックに表示された文字を見て、レオルスが箱を縦に振る。
振った衝撃で欲求の種類を変えられないか試しているようであったが、その試みは失敗に終わったようで、今度は片手で箱を持ち、上から叩いていた。
レオルスが箱を叩いている間に、ティファレットが書物に記されていた必要素材を、まとめて紙に転写し、クレイルへ手渡す。
「これが<魔刃の傷跡>を消すために必要な五つの素材よ。さすがに簡単にはいかないわね……」
「ガーネットハーブ、レッドホットレモン、ティアラレイクの水……待ってください、最後の二つは……」
「不可能では、と言いたいところでしょうが、可能よ。良くも悪くも今は魔界のゲートが開く前。つまりゲートの近くは既に侵食が始まっているはず」
クレイルがリスト化された素材の最後の二つを凝視する。
その二つの素材は、こちらの世界では存在を確認できない生物であった。
「魔界の生物そのものを素材として使うとは……」
最後の二つの素材、一つは<シャドウリザード>の尻尾。
シャドウリザードは低級の魔界生物で、その名のとおり影でできた体をもっている。
普通の人には触ることができないが、魔力を帯びていれば触ることができるため、クレイルやレオルスなら問題ないであろう。
体が小さいため、ゲート開放前に隙間からこちらの世界へ入り込んでくる。
その性質から、魔界からの偵察道具として使われていることもあるようだ。
もう一つは<ブラッドローズ>と呼ばれる植物。
花弁を含め、その茎や葉を含むすべてが血のように赤い魔界の植物である。
魔界のゲート開放前に、隙間から出てくるシャドウリザードや瘴気の影響で草木に異常が発生し、こちらの世界の植物が変質してバラのような形の花が咲くことからそう呼ばれている。
ようやく箱を叩くのをやめたレオルスが、クレイルのリストを見る。
どうやら、ミミックの要求は一度提示されたものから変わることはないようであった。
「なるほど、最後の二つはゲート開通前に手に入れなきゃヤバイってことか」
「そのようですね」
クレイルがティファレットから受け取ったものをまとめる。
「ありがとうございます、叔母様」
「ごめんなさいね、こんな形でしか協力してあげられなくて……さ、早く準備してあげて」
ティファレットに促されるようにクレイルたちは地下を出た。
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