悪魔達の侵略23(20130104)

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声も上げずに消え行くレッドデスサイズを見て、ティファレットはその場から森の中へ飛び込む。 付き従っていた悪魔たちが全て消滅したのを感知したのか、アンドッグは一匹残らず森から姿を消していた。 残っている魔力を惜しむことなく使って、空間移動に近い速度で森の奥へと到達する。 そして、クルスが戻した本を再び設置し、詠唱と共に腕を振り払った。 クレイターローズの残骸、魔界の門となっていたその場の空間が、瞬時に縮小していく。 (…………) ティファレットは万が一に備えてすぐに攻撃できる態勢を維持していたが、やがて何事もなく空間が閉じたのを確認すると、ようやく身体を覆わせていた魔力を解除した。 (これで終わりね) その場に溢れ出していた魔界の魔力も跡形もなく消え去っている。 最後の仕事である魔界の門の封印を終えて、ティファレットは森の外へ向かった。 (終わった……) 完全に消えたレッドデスサイズ。 ティファレットが森に向かったのを見て、クレイルは魔界の門についても、これで問題ないだろうと思った。 クレイルは、羽ばたきながらその場に浮遊し、停滞する 「父さん、母さん。僕たちはもう大丈夫。これからは……安心して眠ってください」 と、空を仰ぎ、呟いたその時 「……ッ!?」 クレイルの身体から、一斉に力が抜ける。 (酷使した反動か――!) 今さっきまで自由に操っていた翼も手足も、クレイルの命令を一切受け付けない。 クレイルは仰向けになり、ぼやけた視界で空を眺めながら、地面へ向けて落下する。 指一つ動かせないまま、クレイルは朦朧(もうろう)とした意識の中でゆっくりと目を閉じていく。 ところが突然、クレイルの両手が暖かい何かに包まれる。 両手にだけ、握られるその感覚をしっかりと感じると同時に、落下速度が少しだけ和らぐ。 『やったなクレイル。ハハハ、最後くらいしっかりしろ』 『ありがとう。あなたが無事でよかった……』 (父さん……母さん……) 瞼(まぶた)を閉じながら、はっきりと聞いたその言葉に、クレイルは答える。 「えぇ、終わりましたよ」 地面まで数メートルのところで、その両手の感覚が消えると、クレイルの身体から翼や尻尾が消え去り、光を放ってテンペストの身体と分離した。 ちょうどテンペストの背にクレイルの頭がもたれかかる様に、仰向けのまま地面へ落下し、 『まったく無茶をする――』 最後にテンペストの言葉を聞いて、そのままクレイルが気を失ってしまう。 「お兄ちゃん!」 「兄さん!」 慌てて叫ぶ妹たちの声が、その場に響いていた。

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