悪魔達の侵略22(20130104)

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大きく羽ばたき、空から急降下したクレイルは手にした<太刀>を振り下ろす。 クレイルは右腕の鎌を狙い、レッドデスサイズの右側面から狙いをつけた。 だが、レッドデスサイズは鎌を庇う様に身体の向きを変えると、その太い左腕でクレイルの太刀を受け止める。 鎌を外側に折ることはできないため、クレイルの攻撃を身体の右側面から受け止めることは出来ない。 クレイルの攻撃がそこを狙ってくるのは、レッドデスサイズも予測できていたことだろう。 ぶつかる二つの魔力が弾け、その場に風を巻き起こす。 「さすがに、一筋縄ではいかないか――」 太刀の刀身に帯びた魔力は鋭く研ぎ澄まされており、レッドデスサイズが受け止めていた左腕に、刃が沈んでいく。 クレイルが太刀を振り切るより先に、レッドデスサイズは避けていた大鎌をクレイルに向けて振り下ろした。 レッドデスサイズの鎌もまた、近距離で直接受ければ無事では済まない。 「くっ!」 クレイルは咄嗟に太刀を引き、後方へと飛ぶ。 鎌を振り下ろし、さらに後から遅れて追撃してきた鎌の先端部分が伸びるが、クレイルは太刀を使ってそれを振り払う。 視界に捉えている状態なら、どちらの攻撃も受け流すのには問題ない。 再び距離を置いてレッドデスサイズを見てみると、確かに刃が通ったはずのその部分は、すでに再生を始めており、瞬く間に傷口が塞がっていく。 『極秘薬の効果がいつまで持つか……どうするクレイル』 未知なる薬は、効果の持続時間も詳しく分からない。 「薬品武器……」 『ん?』 「フフ……合成師らしく使おうか」 心配するテンペストにクレイルがそう言うと、地を蹴って再びレッドデスサイズへ向かう。 今度は太刀を右手だけで持ち、レッドデスサイズの手前で上空へ飛び上がると、空中から一直線にレッドデスサイズへ降下した。 太刀はまだ眼下のレッドデスサイズへ向いていない。 クレイルが太刀ではなく、掴みかかろうと伸ばした左手をレッドデスサイズの豪腕が防ぐ。 掴んだ左腕を強く押して腕を弾き、再びレッドデスサイズが左腕を構えるより早く、魔力を込めていた太刀を真っ直ぐに横へなぎ払った。 レッドデスサイズの胴部分に、刃が触れるその刹那―― 鎌ではなく、その先端から伸びた部分がクレイルの太刀に巻きついた。 続けて、まるで右腕の鎌の中に吸い込むようにクレイルの太刀を掴み取る。 クレイルは握った太刀を離さず、レッドデスサイズの眼前で停止した。 捕らえられた太刀はクレイルが腕を引いても動かせない程、強力な力で抑えられている。 だがクレイルは、レッドデスサイズを目の前にして思わず怪しい笑みを浮かべると 「合成師が使う薬品武器は、基本的に使い捨てだ。それはもう使わない」 そう言って、刀に最後の魔力を込める。 膨張する太刀を抑えようと、レッドデスサイズは押さえつける力をさらに強くしながら、目の前のクレイルの異変に気づき、空いている左腕を振って殴りかかる。 クレイルはそれを難なく右手で受け止めると、その掌(てのひら)に魔力を溜め始めた。 やがて、レッドデスサイズが掴んでいたクレイルの太刀は、乾いた音を立てて崩れ落ちる。 レッドデスサイズの鎌は開放されるも、先端のしなやかな部分は込めていた力から急に解放されて、あらぬ方向に向いている。 薬品武器を使い捨て、クレイルは間合いを詰め、触れたまま攻撃を受けずに時間を稼ぐことに成功した。 レッドデスサイズの左腕を掴んだまま、クレイルが静かに口を開く。 「バシリス……」 瞬間、レッドデスサイズは鎌よりも先に、巨大な口で目の前にいたクレイルの頭部へ噛み付こうとする。 だがクレイルは冷静に、左手でその頭を押さえつけると 「クリシ――!!」 母イヴが使用した魔術を叫んで唱えた。 クレイルと、融合したテンペストの身体から、魔力が止まることなく全て腕へと集まり、掴む両手からレッドデスサイズへと直接魔力が通過していく。 「――――!!」 流し込まれたクレイルの魔術は、レッドデスサイズの体面を瞬時に覆うと、頭から胴、足の先までが白く輝く光に変化していった。 その紅い身体の隅々までが白く染まり、光の粒となって輝き、消えていく。 クレイルはレッドデスサイズから離れると、空からその光を眺めた。

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