悪魔達の侵略17(20130104)

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異変に気付いたのは外にいた魔女たちもであった。 「クルス……?」 ティファレットが渡した本は、魔界の門の前に設置すると、付近の門を全て封印できる高性能な魔術を宿した魔導書である。 だが、訪れた違和感は門の封鎖によるものではなく、別の何かが発生した様に感じた。 その時、ティファレットが消したはずのティピードとビービーが、突如魔女たちの足元で甲高い笑い声を上げて笑う。 「「アハハハハハハ!!」」 その場の全員が驚き、思わず地面へ目を向けた。 「いつの間に――!?」 魔女全員が咄嗟に距離を置く。 だがその姿は小さく、最早戦えるような魔力は残っていない。 悪魔たちもその状態から攻撃に移行することは無く、ただただ空中に浮遊したまま笑い続けていた。 さらに、不気味な感触が全員を襲ったのはその時、 「クルス!!」 何者かに森の上空へ向かって殴り飛ばされたクルスが、魔女たちの元へと落下した。 クルスは何とか着地寸前で身を翻し、ティファレットの前に着地すると、必死に維持していたのか、人の型を直ぐに解いて獣の姿に戻ると、そのまま草の上に倒れ込む。 ティファレットが慌ててクルスの身体を確認すると、胸部には一筋の紅い傷があった。 白く美しい毛並みの獣を汚すその真紅を見て、ビービーが呟く。 「私たちはただの駒……」 ビービーに続けて、ティピードが両手を上げて天を仰ぎ、叫ぶ 「ついに、目覚めたぞ……!」 ティファレットは容赦なく、ティピードとビービーに魔術を放つ。 今度は微塵も残さず、二人の気配を完全に消し去ると、間髪を入れずにその場で叫んだ。 「ゲブラー! ネツァクと一緒にシールドを! ビナーとケセドは姿が見えたら拘束を!」 ティファレットの指示に、全員がすぐに身構える。 ゲブラーとネツァクは、ティピードとビービーから身を守っていたシールドよりも遥かに大きく頑丈そうな分厚いシールドを作り出す。 「お母様の……予言どおり……」 「ティファレット叔母様?」 「どう足掻いても、あれを先に封じる事は出来ないのね」 「その予言とは……?」 「レッドデスサイズは門を通過してこちらに姿を現す、と言うこと。予言に抗(あらが)い、たった数分後の未来だけでも変えたかったんだけど……ダメみたい」 「その予言であの樹……クレイターローズの出現を先に封じてしまう術はなかったのですか?」 「えぇ、実は魔界の門が開かれる予兆は、この場所以外にもいくつも発生していたのよ。いつ何処からレッドデスサイズが現れるのか、本物の門はどれなのか分からない、前代未聞の状態だったの」 「そんなことが……」 「あの子、パピメルの傷が酷く悪化したのも、多数の門が出現して色々な影響があったからでしょうね。だからあなたが私たちの所に来たとき、一番近い門の場所であるこの森を教えたの」 「結果、レッドデスサイズに選ばれた門は……この場所だった」 「そう。魔界の波動を強く感じる場所はいくつもあったのに、それらを全て無視してクレイターローズと門はここに姿を現した。それで確信したわ」 「レッドデスサイズを消すのは父との約束です! 予言がどうだろうと関係ない……僕は父との最後の約束を果たすだけです!」 その瞳に迷いは無く、強く言葉を放つクレイルに、ティファレットの表情が一瞬だけ曇った様に見えた。 だが、ティファレットは何も言わずクレイルから視線を外すと、 「みんな、私たちの後へ!」 その場全員を、ゲブラーとネツァクが作ったシールドの直ぐそばへ集めた。

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