悪魔達の侵略16(20130104)

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これが、<魔女>と言う存在。 クレイルは目の前の光景を見て改めて痛感した。 自分達に向ける優しい笑顔とは裏腹に、その戦闘に特化した魔力はクレイルたち合成師が持つものとは全く違う。 彼女たちは敵に一切容赦しない。 相手の事情を知る事無く、それが悪魔だと分かればその理由だけで相手を逃がすことなく消してしまう。 危険な相手だと分かっているからこそ、その判断は正確に素早く行わなければならないのだろう。 そう考えれば、この場の全員を守って逃げ出すなどと言う考えは、何て甘い浅はかな事だろうと、クレイルは自らの考えに落胆した。 「お待たせ、あとはあの獣たちと魔界の門だけね」 そんなクレイルを見てか、ティファレットは何事も無かったように声をかける。 「お見事です、ティファレット叔母様」 クレイルの言葉に、ティファレットは笑って言った。 「フフフ……可愛い甥と姪に、格好悪いところは見せられないからね。それに……」 「?」 「あなたたち合成師とは魔力の本質が違う。魔術で戦って手を汚すなんて行為は、私たちだけでいいのよ」 「…………」 先に制され、クレイルは言いかけていた言葉を飲み込んでただ頷いた。 (そう言われようとも……僕はこの魔力は自分の正しいと思う事に使いたい) クレイルが無言で頷くのを見て、ティファレットがその場を離れる。 念のため、自分の背後全員を守らせていた使い魔を呼び寄せた。 「クルス! 最後の仕事よ」 呼ばれた使い魔は、獣の姿のまま、ティファレットが差し出した一冊の本を口に咥える。 ティファレットがそっとクルスの頭を撫で、 「行って!」 叫ぶと、その声で勢いよく地を蹴り、クルスは瞬く間に森の中へと飛び込んだ。 ティピードに追加で魔界から召喚され、森の木々に身を潜めていた<アンドッグ>たちは、クルスの侵入を察知すると、我先に飛びかかろうとクルスを遮るように木の脇から姿を現す。 だが、当然それに気付いているクルスは、わざわざ敵と対峙する様な真似はしない。 森の奥へ直線に進むことなどなく、地を蹴り、木々を跳び、森の中を疾走した。 地上を駆けるそのスピードは、魔力を使用して空を駆けるテンペストをも越えるほどの勢いだった。 わずか数秒で、クレイルとレオルスが襲われたクレイターローズが姿を現した場所へとたどり着く。 炎上するクレイターローズは焼けて崩れ、もはや原形をとどめていなかった。 クルスは到着し、木から空高くへと飛び出す。 そしてその身体を回転させて、着地までの間に獣の姿から人の姿へと変化した。 地面に降りたそのタイミングで、ティファレットから受け取った本を広げ、クレイターローズの前に設置。 だが、本から放たれる魔力が不自然な動きをする。 「!?」 異変に気付いたクルスが、設置した本を回収しようと手を伸ばしたその瞬間―― クレイターローズの幹から出現した紅く巨大な何かが、クルスの身体を斬り、同時に激しく突き飛ばした。

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