ドリーム&メモリーズ18(20121211)

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迫り、襲い来るクレイターローズの攻撃を防ぎ、走り続けた二人は、ついに森の入り口を目にする。 「外が見えたぞ!」 「レオルス、これを!」 クレイルが残り数本となったコンポジションウェポンズを剣に変え、ここまで速度を落とすことなく、執拗に二人を捕らえようとしてくる蔦を切り落とす。 それと同時にレオルスにブラッドローズの入ったケースを投げ渡す。 「おっと、あぶねっ!」 「そのまま先に! 突っ切ってください!」 「わかった!」 クレイルが両手に剣を構え、レオルスのすぐ後ろで両側から迫る蔦を切り落とすタイミングを見計らう。 左右どちらから来ても、先を走るレオルスを守りながら攻撃できる。 (よし、これなら――) 残り数歩で外へ出るその瞬間、レオルス眼前に無数のクレイターローズの根が飛び出した。 「嘘――だろ」 出口まで突っ込む勢いで走っていたレオルスが急に止まれる訳も無く、その根に包まれていく様子は急にスロー再生され、レオルスの視界を支配した。 逃げられない、と脳が判断したしたのか、走馬灯の様な再生が続く。 身長より高く伸びた根が、自分を覆い包んでいく中、レオルスは視界を遮断して考えた。 シャドウリザードの尻尾が入ったケースも、クレイルから預かったブラッドローズの入ったケースも自分が持っている。 せめてこれだけでも守りきらないと―― 全力で思考を働かせ、思いついてケースを外へ投げようと判断し、手放そうとした瞬間、クレイルの叫ぶ声と、身体を突き飛ばされる衝撃がレオルスを襲った。 「カイロス・リグマッ!!」 「なっ!?」 クレイルはレオルスがティアラレイクで落雷を避けるために使用した超高速で移動する魔術を使用し、地を蹴った。 レオルスに迫っていたクレイターローズの根をブレイドで横に切り裂き、前方の道を確保する。 そのままレオルスの胸倉を掴み、森の外へ投げ飛ばした。 レオルスは、自分の目で捕らえられない動きで行われたクレイルの行動に、成す術も無く空中へ投げ飛ばされる。 「テンペストッ!!」 続けてクレイル叫んだその時、既にレオルスはテンペストの背の上にいた。 クレイルはレオルスの落下地点へテンペストの魔導書を投げ入れて召喚したのだ。 「クレイル!」 レオルスが身体を起こし、そう叫んだ時にはもう遅かった。 クレイルの足は、クレイターローズの蔦と根に絡みつかれ捕捉され、地面から足を離せない。 片手に持っていたブレイドで足の蔦を切り裂こうとした、その手を押さえるために大量の蔦が絡みついた。 「……!」 魔力を持ったまま身動きの取れないクレイルは、クレイターローズの恰好の餌食となっている。 「レオルス、素材は無事ですね?」 その言葉で、レオルスは両手に抱えていた二つの素材の無事を確認する。 「あ、あぁ、大丈夫だ!」 クレイルはそれでもまだ抵抗し、片手に持ち替えたブレイドでさらに迫る蔦を切る。 だが、最後に残ったその片腕もついに封じられる。 両手両足が完全にクレイターローズに捕捉されたクレイルを見て、レオルスの背筋が凍った。 レオルスは最初に受けたたった一撃で、ほとんどの魔力を吸われている。 クレイルの魔力量がいくら膨大だからと言って、無限ではないそれを今、完全に固定されて吸われ続けている状態では、時間と共に生命が終わるまでのカウントダウンを宣告された様なものだ。 「クレイル!? 何で!」 「行ってください! これ以上は蔦も根も出てこない! それをパピメルの元へ!」 「それじゃお前が手遅れに――」 「いいから早く! 今のうちに!」 「――!」 レオルスの心の中に葛藤が起こる。 クレイルは自分の身代わりになった。 自分の手の中から素材を受けて、魔術で脱出することだって可能だったのでは? 結局、最後まで荷物だったのは自分では? 俺は、クレイルをこのまま見捨てるのか―― (違う! 今の俺に出来るのは!!) 自らの心の声を閉ざし、レオルスはクレイルに背を向ける。 「テンペスト! 頼む!」 レオルスがテンペストの背を叩くと、テンペストの魔力までもが、ほぼゼロに等しい事に気付く。 クレイルが魔導書を投げた時、いつの間にかクレイターローズにどこかを触れられ、一瞬で魔力を持っていかれた様子だった。 「少しの間だけ持ちこたえてくれよ!」 テンペストはレオルスに応え、地を走り空へと飛び上がった。 無事にその場を離れていったレオルスとテンペストを見て、クレイルは安堵する。 「フフ……秘薬を……パピメルを頼みますよ」 捕らわれながら笑み、そして静かに森の奥へ視線を向けた。

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