ドリーム&メモリーズ17(20121211)

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ティーチとエールに招かれて、パピメルが足を踏み込んだ扉の中は、それまで辿ってきた道とうって変わって、何も無い無機質な部屋だった。 正確には、鏡が一つ。 パピメルの目の前にただ一つだけ、全身を映す姿見が置かれている。 「ティーチ? エール?」 不穏な気配を感じ、今まで一緒にいたその人物の名を呼ぶが、いつの間にか二人の姿がどこにも見えない。 後ろを振り返ると、部屋に入ってきたはずだが扉などは一切無く、ただ無機質な部屋が後方にもずっと続いているだけだった。 (入る前に二人が言っていた、私の知りたいものって、これなの?) 仕方なく、パピメルはその鏡に近づく。 鏡面に歩いて近づくパピメルの姿が映っているが、それは何も不思議なことはない、ただの鏡であった。 「ティーチ、エール。私の記憶はこの鏡と関係があるの?」 理解できず、ただ一枚の鏡を目の前にして、パピメルの不安は募っていく。 『良く見てご覧』 「!?」 急に、何処からともなく響いた囁き声がパピメルを驚かせる。 『鏡に近づいて、自分の姿を良く見て……』 その声はティーチでも、エールのものでもない。 『ほら、見て』 不気味な声に言われるがまま、パピメルが鏡の中の自分に視線を向けると―― (姉さん……?) そこに映し出されたのは、パピメルが良く知る色の髪と瞳。 いつも一緒にいる、フラメルの桃色。 だが (違う、これは) その目、顔つき、髪型は 「私だ……」 『そう、それが貴女』 囁く声が続ける。 『貴女は姉と同じ姿で生まれてきた。同じ髪色と瞳の姉妹だった』 パピメルは自分の鼓動が早くなるのを感じる。 鏡に映し出されているのは紛れも無く自分の姿。 その髪色と瞳は見慣れない色に染められている。 「私は、誰なの?」 『貴女は貴女。昔も今も変わらない』 「じゃあ、この私は……誰?」 『思い出してみて。これは貴女――』 囁く声が大きくなった、その時、パピメルの記憶が脳内に溢れかえった。 高速でシャッターを切る様に再生されて広がる映像。 笑顔で走る幼い姉、笑い声のすぐ側で、幼い兄は赤髪の大人と森の中へ歩いていった。 「姉さんと、兄さん?」 『ねぇ、パピメル。見えている? 聞こえている?』 「「ねぇ、パピメル」」 重なる二人の声を聞いてパピメルが我に返り、後ろを振り返る。 そこに立っていたのは、黒に染まったティーチとエールだった。 思わずパピメルが問いかける。 「あなたたちは、一体誰なの?」 「僕はティーチではない」 白い服、白いハットに白い仮面を被っていたティーチの全てが、黒く染まっていた。 整っていた服は壊れ、黒のハットと黒い仮面、光る赤い瞳が、パピメルを凝視する。 「私はエールではないわ」 エールも、桃と紫の不思議な髪色は白黒に成り果て、服は不自然に溶解している。 ティーチ同様、光る赤い瞳がパピメルを凝視する。 その視線を受けて、パピメルは思わず一歩後退する。 「見せたかったのは、これなの?」 パピメルが不気味な視線を受けながらも、二人に問う。 すると二人は顔を合わせ、怪しい笑みをパピメルに向け 「ここからが本番ですよ」 「えぇ、お楽しみはこれから……」 そう言ってパピメルに一歩近づいた。 パピメルが思わず後退しようとしたが、背にあった姿見が邪魔をする。 「私たちは人々に<魔獣>と呼ばれています。まぁ今更紹介しても遅いかもしれませんがね」 「ありがとうパピメル。ここまで来てくれたことに感謝するわ」 パピメルは、目の前の二人の間に一匹の黒猫が立っている事に気付く。 (黒猫のぬいぐるみ?) 頭には縫い目があり、虚ろな表情は何を見ているのか、何を考えているのか分からない。 だが今はぬいぐるみより気にすべきことがある。 彼らは自分のことを<魔獣>と言った。 「どう言うこと……? 私の母親の記憶はどこにあるの? 鏡の中の私は何なの? 答えて!」 「「さぁ、一緒に行きましょう」」 パピメルの問いに答えることなく、怪しい笑みを浮かべたまま、ティーチとエールがゆっくりと近づいてくる。 二人に警戒しながら、もう一度パピメルが黒猫のぬいぐるみへ目を向けたその時―― 黒猫のぬいぐるみが、一瞬で膨張してパピメルへと接近した。 声を出す間もなく、大きく開いたその口がパピメルを頭から飲み込んだ。

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