ドリーム&メモリーズ11(20121211)

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森から出たラウロスがクレイルをそっと草原の上に座らせる。 ふと、幼い自分を見てクレイルが思った。 (何故、今までの僕は覚えていなかったのに、今この状況は再現されているんだ……?) 父と歩く森の中へ強制的に移動させられたのは、クレイルは母と一緒にその場にいなかったからである。 つまり自分が見ていなかった過去は、この場で再現されないはずである。 だが、今記憶を消された自分の過去が再生され続けている。 座ったままの幼いクレイルは、少しずつ視界がはっきりしてきているのか、ぼんやりとしながらも自力でその場で顔を上げようとするが、俯いたままで今の周りの状態を認識できているとは思えない。 詳細は不明だった。 ようやく出てきた父親に気づいたレオルスが少しだけ安堵した、その時―― 唐突に訪れた風が、その場の全員を襲う。 その風はレオルスが発生させていた防護膜も吹き飛ばし、その場の全員を晒し出す。 同時に、とてつもない魔力の存在が倒れていたイヴのもとに集まった。 「魔女か……ずいぶん遅かったな」 風を受けたラウロスが魔女たちを見て、嫌味を込めてそう言う。 「…………」 魔女たちは何も言わず、ただラウロスを睨み付ける。 四人の魔女はそれぞれ、黒、赤、青、緑の衣服を身に纏っていた。 その存在がそこにいるだけで感じる、圧倒的な魔力。 ラウロスがイヴのもとへ近づきながら、途中、魔女を見て驚くフラメルの頭に触れ、マグナが行ったようにフラメルの父親に関する記憶だけを消し去った。 「ラウロス=オリジナ、か。 何故その子の記憶を操作した?」 先頭に立っていた黒い魔女がラウロスの行動を一瞬で見破って言う。 「友との約束だ。お前たちには関係ない。それより……」 ラウロスが動かないイヴを見て言う。 「どうにかして……助けることは出来ないのか?」 すると黒い魔女が首を横に振り、 「この命の終わりは運命。この娘、イヴが生まれた時、既に決められていた」 そう言いながら撫でるようにイヴに触れると、倒れていたイヴの身体がぼんやりと淡い光に包まれる。 「<魔女の子たち>よ……お前たちの命にもまた、定められた運命がある……」 黒い魔女が動かないフラメルとパピメル、クレイルを見て言う。 「何だと……それはどう言う事だ?」 今度はラウロスが魔女を睨む。 が、魔女はそれを無視して 「イヴは……私たちが送る。ここから去れ」 そう言ってイヴを取り囲んだ。 秘境の魔女が四人、しかもその魔力の波動からして、かなり上級の魔女だろう。 せめて亡骸だけでも奪えればと思うが、ラウロス一人が立ち向かってどうにかできる相手ではない。 「……わかった、転送魔術を頼めるか?」 「……場所は?」 「あぁ、この森から南の方角の――」 やがてその場にいた全員が魔女の転送によって一人一人姿を消していく。 イヴは魔女に取り囲まれながら、その場の草木に残りの力を与えるかの様に、静かに輝き光を放つ。 クレイルが転送される直前、周囲に舞う花びらの中でイヴが光りとなってゆっくりと消えていった。

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