ドリーム&メモリーズ5(20121211)

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目を開けると、クレイルは森の入り口で木に寄り添い、座っていた。 秘薬を完成させる為に急いでいたのに、レオルスが自分のことを心配してわざわざ入り口に運び出したのかと思い憤慨する。 「レオルス! 何故外に……」 と、叫ぶと同時に顔を上げると、目の前には信じられない光景が広がっていた。 (なっ――) それを目にした瞬間、ぼやけていたクレイルの視界が鮮明になる。 「ママ見て! 四葉のクローバー!」 桃色の髪の少女が、ぱたぱたと走っていく。 (幼い頃のフラメルと……母さん……!) 向かう先には、桃色の髪の子供を抱いた、白い衣装に身を包んだ女性がいる。 クレイルはその光景を知っている。 今、自分の足元に五つ葉のクローバーを隠した子供がいることも。 (これは、子供の頃の僕の記憶……?) 「まぁ、すごいわねフラメル。お兄ちゃんより先に見つけられるなんて」 母に走り寄ったフラメルが母に四葉のクローバーを見せる。 「えへへーわたしのかち!」 「負けたよ、フラメル」 フラメルの嬉しそうな笑顔を見て足もとにいる<子供の頃の自分>が言う。 「パピちゃん、起きないね」 フラメルが、母の抱く桃色の妹の髪を撫でる。 (パピメルの髪はまだ……) ここで、これから起きる惨劇を再び目にしなければならないのかと、クレイルはただその場に立ちつくす。 「さっきまでフラメルと走り回っていたんだもの。少し疲れちゃったみたい。フラメルは大丈夫?」 「うん! わたし、まだまだはしれるよ!」 「ふふ、元気いっぱいね」 フラメルが走りながらクレイルの側に戻り、そして母に向かって言った。 「ねぇ、ママ! パパはまだこないの? パパのおともだちもまだー?」 (今、何と言った……!?) 信じられない言葉が、幼いフラメルの口から飛び出した。 (パパだって? 誰の?) クレイルが言葉を発しようとしても、体が動かず声も出ない。 目の前の出来事が、止められない映像の様に一方的に進んでいく。 「そうね、もうすぐだと思うけど……」 (母さんまで、何を言っているんだ!? 父親が僕たちと一緒にいたことなんて――) 「あ、パパだ!」 クレイルの叫びは届くことなく、小さな妹の嬉しそうな声につられ、現れた姿に目を釘付けにされる。 (誰だ……僕が知っているはずがない! 知っているはずが……) その男を目にして、思考を巡らせるが、混乱するクレイルの鼓動は早くなる。 赤い髪と赤い瞳を持つ男。 身長は今のクレイルよりも若干高く、合成師がよく身につけるスーツとローブを着用している。 「父さん!」 フラメルに続き、幼い自分までもがその男のことを父親だと認識している。 (違う、何故僕が知っている) 何が違うのかと、何故今の自分は知らないのかとクレイルは自分に問う。 やがてその男は母の元に到着し、駆け寄ったフラメルとクレイルの頭を撫でる。 その瞬間、その光景を見たクレイルの脳内に、いくつもの記憶が飛び交った。 そこでようやく、クレイルは自分が頑(かたく)なに否定し続けた答えを知る。 父のことを拒否したいわけではなく、自らの記憶を認めたくなかったのだ。 なぜ家族の記憶を、子供の頃に受けた父の愛情を、こうして自分が忘れていたのかを。 記憶の断片が少しずつ、確実に繋がっていく。 目の前に広がる、家族が繰り広げる幸せそうな光景。 クレイルは温かな手で何度も頭を撫でられたことを、今再び思い出す。 生まれてからずっと、子供の頃のクレイルが当然の様に憧れていた父と言う存在。 (知らない訳がない……あなたが、あなただけが僕の父親の……) クレイルの口がゆっくりと父の名を呟いた。 (マグナ……マグナ=マティリア――)

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