ドリーム&メモリーズ4(20121211)

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森の中へと入ったクレイルは、既に何度も謎の幻聴に襲われていた。 その場に一緒にいるレオルスが話かけている訳ではない。 聞き取れない音が、クレイルに精神的な疲労を蓄積させていく。 (……他に誰か……いるのか? この森に?) クレイルが何度も周囲を見回す度に、レオルスも警戒するが、レオルスが声をかけても苦悩するクレイルの表情が晴れることはなかった。 歩き続け、森の入り口に比べて辺りの霧も濃くなり始めた頃、事は突然起きた。 苦悩の表情を浮かべたまま、クレイルがついに膝をついた。 先を進んでいたレオルスが慌ててクレイルのもとに走り寄る。 「お、おい!」 「…………」 「どうしたんだよ!」 「……いる」 「は?」 「似ている……?」 クレイルは地に膝を付いたまま、虚ろな表情で前を見る。 「似ているって、何が?」 「この森が……あの時の、母さんが消えたあの時の森に……」 レオルスが見たこともない表情で、独り言の様に呟くクレイル。 常に自分の上にいる存在である者の不可解な言語が、レオルスにとっては恐ろしかった。 「くそ……どうする、一旦戻るか?」 「だめだ、早く秘薬を――」 クレイルがレオルスの肩に手をかけて無理矢理立ち上がろうとした刹那、そばにあった木の根元に倒れるように座り込んだ。 「――ッ!」 クレイルはそのまま片手で頭部を押さえる。 森へ入る前にも襲われた頭痛は、幻聴と共に脳内で別の誰かがクレイルに何かを見せようとしているのか、視界をぼやけさせる。 遂にそれに耐えかね、クレイルの首がうな垂れた。 「走っていた……森の外へ向かって……」 「……?」 再び、クレイルが目の前にいるレオルスでも聞き取れない程小さな声で呟く。 「走れ……? 僕に……言ったのは……?」 クレイルが自ら頭を抑えていた手から力が抜け、ゆっくりと地面に落ちる。 「おいッ!」 レオルスが慌てて確認すると、どうやら気を失っているようだった。 (クレイル、お前まさか……) 何処からともなく、霧を揺らすそよ風が吹く。 レオルスはクレイルを見ながら息をのむ。 すると、風はレオルスの言葉を待っていたかのように止み 「思い出したのか? お前の父親のことを――」 座り込むクレイルに向けて、レオルスが静かにそう言った。

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