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「ママ見て! 四葉のクローバー!」
桃色の髪の少女がぱたぱたと全力で母親に走り寄る。
一刻も早く母へ自分の功績を報告したいのだろう。
「まぁ、すごいわねフラメル。お兄ちゃんより先に見つけられるなんて」
「えへへーわたしのかち!」
負けたよと、離れた場所から兄のクレイルが声をかける。
手には既に五つ葉のクローバーを握っていたが、それをそっと隠しながら草の上に座り込んだ。
雑草の生え具合を観察し、草を使って魔法陣を組んだり出来ないかなどと考えながらゆっくりと辺りを見回す。
「パピちゃん、起きないね」
母親の元へ戻ったフラメルは、すやすやと眠る妹の桃色の髪を撫でる。
母に抱きついて眠っているのは、マティリア家の次女パピメル。
「さっきまでフラメルと走り回っていたんだもの。少し疲れちゃったみたい。フラメルは大丈夫?」
「うん! わたし、まだまだはしれるよ!」
「ふふ、元気いっぱいね」
そう言って、再び兄の所へ走っていく。
魔女は滅多に瞳を晒さない。
大きな帽子を深く被った姿は、一見不便そうに見えるが、魔力によるサポートを得て視野を確保しているため、魔女たち自身は苦労をしていない。
それは子供たちに対しても同様で、家の中、外を問わずその瞳は帽子の下にある。
だがそれでも、子供たちは目の前にいる母親が自分に向かって微笑んでくれているのが分かる度に、母へ無垢な笑顔を返し、母はそれを見るだけで人間である夫と、結婚を許可してくれた一族への感謝をしているのだった。
数ある魔女たちの集団の中でも、クレイルたちの母「イヴ」が所属していた「秘境の魔女たち」は取り分け強力な魔力を持つ一族だった。
それ故に他者との干渉を好まず、自分達から人前に姿を現すことはなかった。
イヴが秘境から離れ、こうして自分から生まれた命を撫でながら生活できているのは、彼女の夫の力があったと言える。
だが、その優秀な力を持つ兄妹の父親は、息子のクレイルからは尊敬に値しない存在として認識されていた。
パピメルが生まれてすぐにこの地に移ったと同時に、父親は姿を消した。
クレイルとフラメルが父親と一緒に過ごした思い出がほとんど無い。
天真爛漫で自由人……母のイヴはそう言う。
その明るくて元気な性格を受け継いだのがフラメルだろう。
クレイルという少年は父を知らないが故に、もはや父に対して自分の家族であるという認識を持っていなかった。
「ママ見て! 四葉のクローバー!」
桃色の髪の少女がぱたぱたと全力で母親に走り寄る。
一刻も早く母へ自分の功績を報告したいのだろう。
「まぁ、すごいわねフラメル。お兄ちゃんより先に見つけられるなんて」
「えへへーわたしのかち!」
負けたよと、離れた場所から兄のクレイルが声をかける。
手には既に五つ葉のクローバーを握っていたが、それをそっと隠しながら草の上に座り込んだ。
雑草の生え具合を観察し、草を使って魔法陣を組んだり出来ないかなどと考えながらゆっくりと辺りを見回す。
「パピちゃん、起きないね」
母親の元へ戻ったフラメルは、すやすやと眠る妹の桃色の髪を撫でる。
母に抱きついて眠っているのは、マティリア家の次女パピメル。
「さっきまでフラメルと走り回っていたんだもの。少し疲れちゃったみたい。フラメルは大丈夫?」
「うん! わたし、まだまだはしれるよ!」
「ふふ、元気いっぱいね」
そう言って、再び兄の所へ走っていく。
魔女は滅多に瞳を晒さない。
大きな帽子を深く被った姿は、一見不便そうに見えるが、魔力によるサポートを得て視野を確保しているため、魔女たち自身は苦労をしていない。
それは子供たちに対しても同様で、家の中、外を問わずその瞳は帽子の下にある。
だがそれでも、子供たちは目の前にいる母親が自分に向かって微笑んでくれているのが分かる度に、母へ無垢な笑顔を返し、母はそれを見るだけで人間である夫と、結婚を許可してくれた一族への感謝をしているのだった。
数ある魔女たちの集団の中でも、クレイルたちの母「イヴ」が所属していた「秘境の魔女たち」は取り分け強力な魔力を持つ一族だった。
それ故に他者との干渉を好まず、自分達から人前に姿を現すことはなかった。
イヴが秘境から離れ、こうして自分から生まれた命を撫でながら生活できているのは、彼女の夫の力があったと言える。
だが、その優秀な力を持つ兄妹の父親は、息子のクレイルからは尊敬に値しない存在として認識されていた。
パピメルが生まれてすぐにこの地に移ったと同時に、父親は姿を消した。
クレイルとフラメルが父親と一緒に過ごした思い出がほとんど無い。
天真爛漫で自由人……母のイヴはそう言う。
その明るくて元気な性格を受け継いだのがフラメルだろう。
クレイルという少年は父を知らないが故に、もはや父に対して自分の家族であるという認識を持っていなかった。
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