秘境の魔女7(20121109)

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再び一階へと戻ると、先ほどと変わらずセフィラが椅子に腰掛けている。 「感謝します、御婆様」 クレイルが一礼し、レオルスも合わせて頭を下げる。 「なに、ただの交換条件さ。礼を言われる筋合いはないね」 クレイルの言葉に対し、冷たく言い返すセフィラ。 だが、クレイルからすれば協力を得られたことだけでも大きい。 「……待ちな」 家を後にしようとしたところで、セフィラが声をかける。 「お前、不思議な召喚獣を持っているね。こっちの世界じゃ見かけない存在だ」 「テンペスト、と呼んでいます。仰るとおり、別の世界からやってきた獣です」 それが何か、と聞こうとしたクレイルにセフィラが助言する。 「今はなるべく召喚しないほうがいいだろう。異なる世界が繋がろうとしている状態だ。異なる世界から現れたその獣もまた、何かしら影響を受けているはず」 「なるほど……」 今朝召喚したタイミング、もしくはここ最近だったのかもしれないが、テンペストの魔力量が、急に減少していたのだ。 魔力量だけならクレイルをも凌駕するテンペストが、今朝の召喚時点では全くその魔力を感じられなかったのである。 「搭乗する以外は召喚を控えます。ありがとうございます」 クレイルの感謝の言葉に何も返さず、セフィラはただそこに座っていた。 クレイルは再度礼を言い、レオルスと共に家を出た。 秘境の魔女のもとへ来訪した結果はパピメルを救うために近道ができたと言える。 一つ問題があるとすれば、ガーネットハーブの回収だ。 今自分たちで箱を増産してハーブを回収している時間はない。 レオルスが思い出したようにクレイルに話しかける。 「……クレイル、ミミックのハーブはどうする? 大量ってことは二人か三人でどうにかなるもんじゃねーんだろ?」 クレイルも箱を受け取った瞬間にそれを危惧していたが、彼の中で解決法が一つだけ見つかっていた。 「心当たりがあります。たくさんの人の協力を得られて、かつ物品の捌きが上手な方々……とにかく一度セルフィタウンへ戻りましょう」 二人は家を後にし、魔女たちの町から外へ出た。 青空のセルフィタウン。 とある部屋では一組の男女が、書類を手にデスクワークをこなしていた。 「はぁ、こんな天気のいい日に部屋の中で仕事なんてねぇ」 ため息をつきながらも、慣れた手つきで書類を確認、整理しているのは、アイテムトレード管理人であるローズ=ヴァレンタイン。 椅子ではなくデスクに座り、窓の外を眺めつつも複数の書類に目を通している。 「そうだな、じゃあ区切りがついたら外でティータイムにしようか」 同様に慣れた手つきで書類をめくるのはもう一人の管理人フェイン=カーティス。 しっかりと椅子に腰掛けて、ペンをしきりに動かしている。 「親戚から良い茶葉が届いたんだ。今日はそれを……って、おい。区切りがついたらって言っただろう」 フェインがそう言い終わる前に、ローズは窓際に移動し、勢いよく窓を開け放った。 「空気の入れ替えよ。気分転換、気分転換」 「だからその気分転換に区切りをつけてしっかりと……」 「まーたそうやって細かいこと言う。今ちょうどそんな気分だったのよ……って、何の音?」 フェインがため息をつく前に、窓の外から大きな羽ばたきの音が聞こえてきた。 力強い羽の音が、窓際のローズと、部屋の中にいたフェインにもはっきり届いている。 ローズが窓から空を見上げて、その正体を理解した。 四肢と翼を持つ獣、それに搭乗する二人。 「フェイン、空から白馬の王子様が二人もきたわよー」 「なんだそれは」 そんな冗談交じりの会話をしている間に、窓の外にテンペストに乗ったクレイルとレオルスが現れたのだった。

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