秘境の魔女4(20121109)

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「さ、中へどうぞ」 案内されるままに、クレイルとレオルスは屋敷の中へと足を踏み入れる。 ここへ来る途中、いくつもの家や小屋が立ち並んでいて、それらの建物はすべて区間ごとに一つの色で構成されていた。 ティファレットと一緒に姿を見せた、赤・青・緑・黒の魔女も、それぞれの色の家に住む魔女であり、案内された屋敷の大きさを見る限り、この白い区間の魔女がこの町の統率者だろうと、二人にも安易に予想できた。 そして今いるこの魔女の町のことも、訪れるのは初めてだが母からは昔話のように何度も聞かせてもっていた。 そう、母親の母親である祖母<セフィラ>についても……。 「お母様、姉さんの……イヴ姉さんの長男、クレイルよ」 ティファレットの案内で屋敷の一番奥の部屋に案内された二人。 直後、その部屋に入ったことを後悔しそうになる。 魔女の部屋としてはありきたりで、鍋に書物、怪しく灯る蝋燭と足元には白い使い魔……それらは全くもって問題ない。 問題は、目の前に座る白髪の魔女の圧倒的な魔力――特にレオルスには巨大な蛇に噛み付かれそうな幻覚が目の前に見える程の威嚇を受けていた。 他の魔女たちとは異なり、全身を覆うローブを身に纏い、長い髪は後ろで一つに束ねている。 「初めまして、セフィラお婆様……」 部屋に入ったクレイルがたったその一言を発言するのに、約十秒かかった。 「ふん……私の孫がこの程度の魔力しか持たないとはな……所詮は人の子か」 その言葉と共に、目の前の魔女に吸い込まれるようにして、部屋に充満していた魔力が消え去る。 必死に耐えていたレオルスは、急に力が抜け、思わずその場で膝から崩れそうになるのを何とか堪える。 クレイルの祖母こそ、この魔女の町の統率者であり、光り輝く白――すなわち白金の字を持つ魔女の中の魔女であった。 「お母様……それくらいにしてあげてください。それより彼らに<魔刃の傷跡>を消す方法を彼らに教えてあげてほしいの」 ティファレットが二人を庇う様にして、クレイルの言葉を代弁する。 「……人間とこの町から出て行った娘の子なぞ、知るか。そしてその夫が、人間が、私の娘を殺したも同然だ」 「お母様……」 明らかに嫌味のように吐露されたその祖母の言葉には、クレイルも同意だった。 クレイルの父親は人間であり、母である<イヴ>もクレイルたちのことも面倒を見たことがない。 正確には、クレイルは父の側にいたことがなく、生まれてから一緒に過ごしたことがあるのか不明だった。 クレイルたちは幼い頃から、魔女である母親と一緒に暮らし、そして幼い頃に母親を失った。 「……僕も父のことが許せない。あの日、目の前で母さんが倒れていたのに、父はいつも通り姿を現さなかった」 「クレイル……?」 珍しく怒りの篭ったクレイルの発言を聞いてか、レオルスが小さく呟く。 「父親については関係ありません。僕は妹を助けるためにここに来たのです。傷を消す方法を――」 「フフ、なるほど」 クレイルの心情を察してか、それとも本音を聞いてか、セフィラがクレイルの発言を止めるように割り込んで言う。 「ならば、取引をしようか」 「取引?」 「お母様、一体何を――」 ティファレットが直感的に何かを止めるように言うが、セフィラの言葉はそれに重なった。 「お前の寿命を一年、私に寄こしてもらおう」 「寿命を……?」 「寄こせ……ってなんだよ?」 クレイルとレオルスは言葉の意味をいまいち理解できず思わず声を漏らす。 真意に気付いてか、ティファレットが声を大にした。 「なっ!? お母様!」 事情を知るティファレットが、慌てて母の元へ駆け寄った

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