秘境の魔女3(20121109)

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<ティファレット>と、クレイルにそう呼ばれたその白い魔女は、周りの四人の魔女を解散させる。 またしても音もなく魔女たちがその場から消えていった。 「あなた……何故ここへ?」 頭を下げたままのクレイルに、再び声をかける白い魔女。 「失礼ですが単刀直入に。僕の妹が<魔刃の傷跡>に苦しめられています」 「何ですって……その傷は消えたはずじゃ?」 クレイルはようやく立ち上がり、目の前の魔女と視線を交わす。 「僕もそう思っていました。母さんが消える前に治してくれていたものだと」 「可能性があるすれば……それは魔界のゲート開放前の影響でしょうね」 それも認識済みだ、とクレイルが頷いて言う。 「あなた方なら既にご存知だと思っていました。そしてそれを開放前に止める術もご存知のはずだ」 「…………」 クレイルの言葉は、ティファレットにとっては想定通りのことであった。 <魔界のゲート>とは、数百年に一度突発的に訪れる、この世界と魔界と言う名の異世界を繋ぐ空間の歪みである。 魔界のゲート開放に近い出来事が、既に数年前クレイルの目の前で発生したことがある。 今回の発生について、ゲートの存在とその発生周期を知る者たちにとっては予想外の出来事だった。 「ゲートの開放前にそれを封印するのは、確かに私たち魔女たちの仕事だわ。ただ……」 「…………?」 ティファレットは、申し訳なさそうに俯き、首を横に振って言った。 「封印を行う準備はまだ整っていないし、情報も錯綜している。それにあなたの妹の傷跡は、ゲートの開放で流れてくる向こうの魔力がこの世界に増すと共に大きくなるわ。それまでに封印が間に合うか保障ができない……」 「それなら……」 「それなら、傷を消す方法を教えてくれよ」 クレイルが言うより先に、ティファレットへ言葉を発したのはそれまで黙っていたレオルスだった。 「あなたは?」 ティファレットはもちろんレオルスに気付いてはいたものの、既に魔力量を知り、その程度の存在は警戒することもないと踏んでいた。 突然かけられた言葉に驚き、思わずレオルスへ聞き返してしまう。 「俺はレオルス。こいつと同じ合成師だ。あいさつはこれで終わり」 強気に前へ出たレオルスが、クレイルへと振り返る。 そして睨み付けるようにして荒々しく言葉を吐いた。 「クレイルお前な! 全部一緒に解決しようと思ってんじゃねーよ! 妹が大変なんだろ!? 家族だろ!?」 問い詰めるようにして連続して言葉をぶつけてくるレオルスに、思わずクレイルが身体を引いてしまう。 「お前ゲートも封じて、妹も助ける方法を見つけようとしてるだろ!? 魔界のゲートなんか知ったことか! 魔女の仕事なら魔女に任せればいい! 他の方法で先に妹を助けてやれよ!」 一方的な発言で責め立てられたクレイルは目を見開いてしまった。 全くもって正論なのだが、根拠もなく、もしその別の方法がなかったらどうするのだろうと思いながらも、本当の優先順位を改めて気づかされたクレイルは、言葉を発さずに一度だけ頷いた。 そんなやり取りを見ていたティファレットが、微笑ましさからか、笑いながらレオルスへ声をかけた。 「フフ……初めまして、よろしくねレオルス。あなたの言うとおり、傷を消すだけなら何とかなるかもしれないわ。調べましょうか」 そう言うと、ティファレットは二人を町の一番北にある屋敷へと案内した。

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