太平洋の160の孤島にそれぞれ一組の結婚したカップルがいる。合計320人の個体がMN型血液型を持っている。それぞれ息子と娘を産み、近親的に子孫を増やしていく。MN型には生存に関するメリットもデメリットもない。数百年後にはどうなっているだろうか?新たな突然変異は起こらないものとする。
すると、160の島のうち10ではMM個体しかいなくなり、10ではNNしかいなくなり、40ではMNしかいなくなる。その他100のうち40はMMとMN、40はMNとNN、20はMMとNNがいる。
MMしかいない10の島、NNしかいない10の島ではもはやそれぞれの遺伝子型だけになり、それ以外の遺伝子型は消滅する。これをrandom fixationもしくはrandom extinctionという。
MとNはcommon alleleである。第一世代の中には、まれなアレルをヘテロ接合体としてもっているものもいるだろう。これは、random extinctionによって消滅しなければ、頻度の高いアレルとなるチャンスがある。このようなことをfounder effectという。
random fixation、random extinctionのおこる確率はサイズNが小さくなるほど高くなる。
このようなfluctuationを、遺伝的浮動genetic driftという。
N個体からなるbreeding populationを仮定する。2Nの配偶子からなる集合である。アレルaの遺伝子頻度をq、p=1-qをアレルAの遺伝子頻度とする。次の世代での遺伝子aの数は二項分布に従う。どういうことかというと、次の世代での頻度qのとりうる値は
で、qの確率は、qj=j / 2Nとすると
ここでをひとつの世代から次の世代へ移るときのqの偶然の偏移とする。分散は
したがって、qの浮動を表す分散は、Nに反比例することがわかる。
random fixationが有限の集団で起こりうることがわかった。一度fixationがおこれば、後戻りはできない。fixationが起こる確率は、世代が後になるほど高くなる。したがって、長期的に見れば、突然変異や民族移動によってこの過程が乱されず、選択圧がかからなければ、遅かれ早かれ集団は全てホモ接合体で埋め尽くされる。この現象は、decay of variablityと呼ばれる。