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337 :戦国武将に信長の野望をやらせてみた ~あの世編~:2011/07/02(土) 22:53:58 ID:4322JIo6
 美琴は速攻で黒子の腕を取り、ぐいーっと捻り上げる。
「おっ、お姉様。痛いっ、痛いですわっ」
「うるさいっ。アンタはこのまま大人しくしてなさい」
「あっ、いやっ、そ、そこはっ……まるでお姉様の電撃が全身を刺し貫くようで……ちょっ、本気で、それ、痛っ」
 それなりに楽しそうな二人はさておき、室内ではそんな気配にまるで気付かぬ士郎と当麻が笑い声をあげている。
「そうそう! エンゲル係数高すぎんだよ! 少しは自重しろっての!」
「俺もバイト増やさないとまずいかーとか思ってたぐらいだしなぁ。食費の増大って家計直撃するよなぁ」
「料理すんのも手間かかるってのにさぁ……そーいや、衛宮は他にも料理作ってくれる奴居るんだっけか?」
「ああ、桜って子が来てくれてるんだ」
 ぴくりと黒子の耳が跳ねる。
「へー、ほー、それはそれは……彼女とか?」
「そんなんじゃないさ、ただの後輩だよ」
「おいおい、ただの後輩が何だってメシ作ってくれたりすんだよ」
 おーし、そこだー、もっとつっこめーと黒子が内心でエールを送る。
「ん~、ま、色々あってな。でも桜はそういうんじゃなくて……妹みたいなもんかな」
「ふーん、んじゃ、その欠食児童ってのは?」
「ああ、藤ねぇな。幼馴染ってのが一番しっくりくるかな。俺小さい頃から大きな一軒家に一人暮らしでさ、寂しくないよう良く遊びに来てくれてたんだよ」
「……どんだけハーレムしてんだよお前」
 本日のお前が言うな一発目である。
「だからそーいうのじゃないって」
「いやいやいや、冷静に考えてみろ。妹みたいな女の子が食事作りに来てくれてて、んでお姉さんみたいな幼馴染がちょくちょく遊びに来る一人暮らしの男って、どんだけ男の妄想具現化してくれてんだって話じゃん」
「そんなもんか?」
「自覚無しかい! よーしよし、そんならこの上条さんが衛宮が如何に恵まれているかを検証してあげよーじゃないか。まずは、その妹みたいな子のスペックだ」
 ないすですわ類人猿! ってな心の声が届きでもしたのか、やたら絡む当麻。
「スペックって……桜は一つ下の普通の子だって」
「ええい、何を言ってるんだ。すぺっくと言えば可愛いとかスタイルの良し悪しとか色々あんだろ」
 改めて頭を捻る士郎。
「ん~、そういう風に見た事無いからなぁ。可愛い、んじゃないのか? 多分だけど。スタイル……うーん、スタイルねぇ、そうだな、ライダー居るだろ。あれの背を小さくした感じかな」
「おいいいいいいい! ライダーってめっちゃぼんきゅっぼんじゃないですかあああああああ!」
 草葉の陰で、床に手をつき顔に深い縦線刻んでいる黒子。
「許しがたし衛宮士郎。既に万死に値するが……もう一つ確認させてくれ。お前セイバーってのとも一緒だったんだよな」
「ああ、聖杯戦争の話は聞いてるか? まあ、その時にな」
 セイバーの凜としたこの世ならぬ美貌は当麻も見知っている。この野朗地獄に落ちろと自分を超棚に上げて更なる追求を。
「…………それだけ、か? まさかとは思うが、他にも身近な美人とか居ないよな?」
「…………」
 ふいっとそっぽを向く士郎。
 当麻は躊躇なく士郎の首に手をかけた。
「はけえええええええ! 居るんだなお前ええええええええ!」
「わ、わかった! 落ち着け上条! それっ! 本気で苦しっ!」
 ちなみに調理室入り口では、顔中顔面神経痛みたいになってる黒子を美琴が必死に宥めてたりする。
「ぷはー、言っとくけどそんなんじゃないぞ。その、聖杯戦争で一緒にやってこうって、子が、その、な」
「美人か?」
「…………………まあ、その、はい、美人です」
 大きくため息をつく当麻。
「お前さあ、恵まれすぎてて逆に怖くなってきたぞ。どういう星の元生まれて来たってんだ。その幸運上条さんに分けて下さいお願いします」


338 :戦国武将に信長の野望をやらせてみた ~あの世編~:2011/07/02(土) 22:54:36 ID:4322JIo6
 最早何発目になるかわからんお前が言うなである。
 その辺の苛立ちが直撃している美琴さんの、主に目がヤヴァい。
 ヘコんでた黒子にびりびりと帯電した電流が直撃し、ヘコんでる余裕もなくなってたり。
「お、お姉様、落ち着いて下さいまし。主にわたくしの健康の為にっ」
「べ、別に、ぜんっぜん、怒ってなんか無いわよ。ええ、でも、何故かムカツいてくるのよね……こっから不意打ちすれば直撃させられるかしらね」
「いやそれ士郎さんにも当たっちゃいますわ。……むしろ撃っとけって思う部分も無きにしもあらずですが」
 めちゃめちゃ危険な状態にあるとも知らず、士郎当麻のエロゲ主人公トークは続く。
「上条の方はどうなんだよ。ほら、あの御坂って子とか可愛い子じゃないか」
 え? 何ちょっとそこで何で私が出てくるのよ、とか一瞬で機嫌が直ってる美琴。
 しかし上条当麻は盛大なフラグクラッシャーでもあった。
「はぁ? 何でそこであんなガサツで乱暴な女が出て来んだよ。アイツ顔合わせる度にケンカ売ってくるとか面倒極まりない……」
 おねーさまー、落ち着いてぷりーず、と後ろから羽交い絞めにしてこれを止める黒子。
「そうか? 黒子が大切に思ってる人だし、そんな感じ受けなかったけどなぁ。他にはそういうの無いのか?」
「無いっ!」
 即答とか、全国の毒男達から呪いの藁人形贈られそうな勢いの当麻であったが、士郎は士郎で、そもそもそういう話にさして興味が無いのかふーんで済ませてたりする。
 調理室入り口では完っ全にブチキレてしまった美琴から、黒子は全てを諦め避難しようと決意していたのだが、そこで不意に当麻が話題を変えてくる。
「でもま、さっきは助かったし、色々と……御坂には思う所もあるからな。メシでも作っていってやろうかなと思ったわけよ」
 士郎も同じ事を考えていたらしい。
「ああ、俺も黒子に旨いものでも食ってもらおうと、な。よしっ、んじゃ二人で気張るとするか」
「おうっ」
 調理室入り口、何故か気まずそうにお互いから目を逸らしつつ、頬を赤らめている乙女二人。
 少しの間調理室に食材と器具がかちゃかちゃと鳴る音のみが響く。
「……なあ、衛宮」
「ん?」
「お前、さ。正義の味方に、なりたかったって聞いたんだけど」
「……なれなかったけどな」
 少しの間。
「俺もだ」
 また、少し間が開く。
「上手くいかねえもんだよな」
「そうだな」
 否定され、否定され続け、それでも求め、届かなかった想い。
 当麻は彼にしては珍しくおずおずと、士郎に問う。
「後悔、してるか?」
「上手くやれなかった事をか?」
「いいや、目指した事をだ」
「してないよ」
「そっか……ははっ、そのせいで随分な目に遭ったんじゃないのか?」
「そういうもんだろ、正義の味方ってのは」
「達観してんなぁ、お前。俺は未だに納得いってねえぞ」
「正しい事をした人間が不条理な、不遇な目に遭うのが当然だなんて、俺だって納得してないし認める気も無いよ」
 当麻は顔を上げ天井を見つめる。
「……誰一人不幸になんてなって欲しくない。誰かが不幸にならなきゃいけないなんて、そんなの絶対おかしいんだ」
 士郎はちらと当麻の目を見た後、正面を見据えて応える。
「ああ、そんなもの見る事に比べれば、少しぐらいの痛さや苦労なんて気にもならないよ」
 少し驚いた顔で当麻は士郎を見やる。その横顔を見て、当麻は大きく破顔する。
「はははっ! 俺、お前とは向こうで一緒になりたかったよ!」
 そう言って勢い良く士郎の肩に手を回す。
「俺もだ」
 同じようにくしゃくしゃの笑顔の士郎。
 まるで年来の親友のように笑いあう二人を見て、美琴と黒子の二人は複雑そうな顔を見合わせる。
「……男の子同士の距離感って、わたくし卑怯だと思うんですの」
「……同感よね」
 色々な事が積み重なってようやく距離を縮められる、そういうものだと思っていた美琴も黒子も、あっという間にそう出来る二人を見て、深いため息をつくのであった。


339 :戦国武将に信長の野望をやらせてみた ~あの世編~:2011/07/02(土) 22:55:34 ID:4322JIo6
【真田家 第百二十ターン 武将王幸村に、俺はなる】


 部屋でどきわくしながら待ち構えていた黒子に、士郎が料理を持って戻って来たのはしばらくしての事だ。
 もちろん黒子の分だけではなく、幸村、セイバーの分も一緒であったのだが。
 それでも文句言えない程の量と出来映えを見せ付けてくれたわけで、口をへの字にしたまま黒子は、もっしゃもっしゃと幸せそうにこれをほうばるセイバーに目を向ける。
「……セイバーさんは、元の世界で士郎さんと一緒だったんですよね」
「む? そうですが。やはり士郎の料理は絶品です」
「人づてに聞いた話ですが、士郎さんは一人暮らしではなく、たくさんの方と同居してらっしゃったとか」
「同居……というのであれば、リンの事でしょうか? サクラやタイガは住んでいたというより良く訪れたという形でしたし。シロウ、ごはんのおかわりです」
 そうなんですの、とスマイルをセイバーにではなく士郎に向ける黒子。
 そのまま士郎に微笑みかけつつ、セイバーとの問答を続けたり。
「全て、妙齢の女性であったとか」
「ええ、リンもサクラも見事な調理の腕前を持っておりました。味噌汁はやはりシロウのものが一番ですね」
「く、くろこ、さん? 何か、俺悪い事したかな?」
 無視してセイバーとの会話が続く。
「しかし、年頃の女性と一つ屋根の下というのは、あまりよろしくないお話なのでは?」
「……ふむ、クロコもシロウと同じ事を言うのですね。ですが聖杯戦争の折でもあり、男女の別などと瑣末な事を考えるべき時ではありませんでしたから」
 ないすふぉろーせいばー! などと士郎が露骨に安堵してたり。
 が、もう一人の男子、幸村はあまり納得いかない模様。
「むっ、しかし戦の最中とて女人に対しては然るべく配慮が必要でござろう」
 お前等いいからさっさとゲームしろよと、そんなつっこみが期待出来る黒子が話の発端なだけに、止めてくれる人も居なかったり。
「女だからとて、戦は戦ですよユキムラ。シロウは戦闘の術なぞ持たぬのですから、護衛たる私がしっかりせねばなりません。わかっているのですかシロウ?」
「え? あ、はい」
「夜討朝駆けを防ぐにはすぐ側で寝るのが一番ですし、ましてや戦の最中に学校へ行こうなどと、正気を疑います」
 ぴきり、と黒子の頬がひくつく。
「な・る・ほ・ど、すぐ、側で、寝る、ですか」
「ま、まままま待て黒子! そこは流石にマズイんで隣の部屋でって事で必死にセイバー説得したんだって!」
「シロウ! まだわからないのですか!」
「士郎殿! 見損ないましたぞ! 何と破廉恥な行為を!?」
 三面楚歌な中でも、残る三人がまるでゲームしてくんないので、士郎はぴこぴことゲームを続けてみたり。
 旧武田領の内政を整えながら、戦力拡充を図り、かつ言い訳を一人一人にしてたりする。
 冷や汗をリッター単位で溢しながら、他所の国へと目を向ける。
「あ、ほら、みんな見てみろよ。伊達家がかなり軍備拡張してるぞっ」
 こと戦に関しては敏感なセイバー、幸村はすぐに頭を入れ替え状況把握に乗り出す。
 しかし、黒子は一人、ちょこんと士郎の隣に座り、その足をつねってたり。
「痛っ、く、黒子?」
「知りません」
 ふんとそっぽを向く黒子が、何故に不機嫌なのかがわからないのは流石の士郎クオリティと言えよう。


340 :戦国武将に信長の野望をやらせてみた ~あの世編~:2011/07/02(土) 22:56:05 ID:4322JIo6
 伊達軍はどうやら上杉との決戦に臨む構えのようだ。
 伊達は先頃上杉に侵攻し敗れている事から、もうしばらくは猶予があると思っていたのだが、思ったより早く動き出した模様。
 真田軍もかなり軍容を整えつつあるが、北條今川と対峙している事もあり、そちらに軍を向ける余裕は無い。
 幸村はぐっと拳を握る。
「ならば、政宗殿が上杉を落とすまでに北條今川を打ち砕けば勝機はござろう!」
 士郎からコントローラーを受け取り、外交画面やらを見ていた黒子は、これに異を唱える。
「いえ、二度目ともなれば、伊達軍はかなり慎重に対上杉の戦略を練っていると考えるべきですわ。おそらく、こちらが関東を抑えるのは間に合いません」
 セイバーも静かに画面を見据えている。
「ふむ、では一刻も早い北條今川との講和が必要になりますね」
「な、何を言われるか!? にっくき北條今川との講和なぞと!」
「ユキムラ、貴方は君主なのですよ。君主が第一に考えるべきは領民の安寧と繁栄。恨みを前面に打ち出し戦略を練り、どうしてこれが守れましょう」
「し、しかし!」
「一介の武人であるのならそれもよろしいでしょう。ですが、もし貴方がこのゲームだけではなく、本当に主の役に立つ何かになりたいと欲するのなら、主がどうすべきかを忠言出来るよう君主のあるべき姿を自らの中に描けなければなりません。今のユキムラにそれが出来るのですか?」
「そ、それは無論でござる! しかし、御館様は某が何を言うまでもなく最高の武人にして最高の主で……」
 セイバーはきっと幸村を見据える。
「ユキムラ、王とは常に孤独なものです。臣下であり続けた貴方にこれを言うのは酷なのかもしれませんが、王はただ王であるから最高なのではありません。そうあらんとし続けるからこそ王たりえるのです」
「せいばあ殿……」
「私は、貴方ならばそんな孤独な王の支えになれる、王の心を知り、王の重圧と重責を分かち合える臣下になれると考えております。それこそが、真に王が望む臣下のあり方なのではありませんか?」
 幸村は返す言葉もない。
「これは良き機会です。ユキムラ、私もまた失敗したとはいえ王を知る者です。私にわかる限りの王を貴方に教えます。それは、必ずや貴方の王の為になる知識となりましょう」
「せ、せいばあ殿……そこまで某と御館様の事を考えて……」
 感涙にむせびながらセイバーの手を取る幸村。
 そんな二人芝居を放置しつつ、さっさと話を進める黒子。
「じゃ、そういう事で北條今川とは講和しますわね」
「……もうちょっと感慨とかそーいうの持とうよ黒子」
「そーんな暇ありませんわ。狙うは伊達が上杉を落とした直後、まだ武将登用が出来ていない時を強襲ですの」
「速攻伊達を攻める気かよっ、容赦無いなお前」
「戦は食うか食われるかですの。まあ見てて下さいまし、わたくし達が一番強いんですのよ!」
 着々と戦の準備を整える黒子、お手伝い士郎、おうさま講座講義中のセイバー、正座でこれを聞く幸村。
 タイミングも完璧に整え、王たらんとする自覚に芽生えた幸村を要した真田軍は、満を侍して戦の扉を開いた。

「貴方の首は! 柱に吊るされるのがお似合いですの!」

 いやそこまでやる気か、と士郎が黒子に聞こえない声で呟いたとか。


341 :戦国武将に信長の野望をやらせてみた ~あの世編~:2011/07/02(土) 22:56:39 ID:4322JIo6
【伊達家 第百三十五ターン 激突! 伊達対真田】


 突然の真田軍参戦に美穂子と小十郎がどうにか自らを取り戻したのは、室内にでかでかとモニターが出現したせいだ。
 壁面いっぱいを使うような大きなモニターには、各人が見知った顔があった。
「てめぇ! 真田幸村!」
 向こうも突然の事に驚いている様だったが、ライバルの出現に幸村は喜色を顕にしていた。
『おおっ! やはりそちらは政宗殿であったか! ここで会ったが百年目! 今度こそ雌雄を決しましょうぞ!』
「上等だ! こっちゃ上杉潰して絶好調だぜ! せいぜいScreamface用意しておけよ!」
 そして、驚いているもう一組。
「え、衛宮君?」
『福路……か。そうか、お前伊達さん手伝ってたのか……』
 黒子とセイバーの頬が僅かにひくついているのだが、士郎は気付けない。
「お、驚きました。その、何と言うか……」
『まいったな。……なあ、悪いんだけどさ真田さん』
 画面の向こう側で、士郎は大層申し訳無さそうな顔をしていた。
『何でござるか士郎殿?』
『いや、さ、俺、福路とぶつかるってのは、ちょっと出来ないんだ。だから、今回の戦は申し訳無いんだけど、俺抜きで頼めないかな?』
 その言葉に気色ばんだのは幸村ではなく黒子とセイバーだ。
『士郎さん!?』
『何を言っているのですかシロウ! 敵前逃亡などと何時からそのような腑抜けに成り下がったのですか!』
 美穂子はすぐに士郎がそう言う理由に思い至った。
 美穂子の最後が、士郎を庇ってのものであったせいだろう。
 そんな律儀でまっすぐな彼に何処か愛おしさを感じながら、美穂子は微笑んだ。
「衛宮くん」
『ん? ああ、ちょっと待ってな。わがままは百も承知だって。それでも俺は……』
「衛宮くん、だめよ」
『え?』
「衛宮くんは私に恩があると思ってるのかもしれないけど、私もまた、同じように考えている事、わかってる?」
『それは……』
「とっくに死んじゃってておかしくない私を、拾い上げて、支えてくれたのは衛宮くんだよ」
『俺はそんな事、全然出来てなかったよ。俺は何も出来なか……』
「ストップ。ね、私衛宮くんと一緒で、本当に嬉しかったし、救われてたんだよ。だから、そんな悲しくなるような事言わないで」
 黒子とセイバーからの視線が超素敵なものになっているのにも、やはり士郎君気付かず。
『……わかった。福路がそう言うんなら……』
「じゃあ、勝負っ」
『ああ、負けないぜ』


342 :戦国武将に信長の野望をやらせてみた ~あの世編~:2011/07/02(土) 22:57:08 ID:4322JIo6
 宣戦布告は終了した、と判断されたのか画面はこれで途切れた。
 やったらにこにこ顔の美穂子と、それを両サイドからじーっと見つめる政宗小十郎。
「……うーん、わかった。もしどうしてもって言うんなら、向こうに行ってもいいぞ美穂子」
「ですなぁ、俺も馬に蹴られるのだけは御免ですし」
 美穂子は驚いた顔で二人を交互に見る。
「えっ!? い、いえ、それは大丈夫です。その、えっと、そういうのでは、ありませんから……」
 まだじーっと見ている政宗小十郎。
「で、ですからっ、その、そもそも衛宮さんには、ほら、大切な方が他にいらっしゃいますし……」
 二人の顔が僅かに歪む。
「……横恋慕と来たか。中々にcoolじゃねえか美穂子」
「なるほど、何というか福路殿は報われぬ恋とか似合いそうですしなぁ。最後に身を引く所まで目に映るようだ」
「……すみません、その感想はかなりショックです……」

 そして修羅場な真田陣営。
「し・ろ・う・さ・ん?」
「シロウ……貴方の性格はそれなりに理解しているつもりですし、美点でもあるとは思うのですが……」
 当の士郎はというと、二人が怒っている理由をなちゅらるに誤解してたりする。
「ごめん、何か勝手な事ばっか言っちゃったな。本当にすまない」
 黒子もセイバーも、これ以上どう怒っていいのか言葉に詰まり、不機嫌そうにそっぽを向いてしまう。
 もう一人、状況が理解出来ていない幸村はというと。
「恩義のある相手とは士郎殿もやり難いであろうが、どうか力をお貸しくだされ。某、どうしても伊達殿には負けられぬのでござる」
「ああ、任せてくれ。ここまで言ってもらって手を抜くなんてしたら、福路に本気で怒られる」
 士郎の言葉であっという間に納得した幸村は、にぱーっと笑って士郎の肩を叩く。
「そうでござる! 全力を尽くしてこそわかりあえるものもあり申す! いざ行かん! 決戦の大地へ!」
「おうっ!」
 微妙な空気もあっさり吹っ飛ぶ二人を横目に、黒子はセイバーにぼやく。
「ああいうノリ、セイバーさんも好みなんじゃありませんの?」
「……嫌いではないのは確かですが、そうしたくない時もあります」
「ですわね。本当にもう、男同士ってどうしてこう……単純というか、簡単というか、ずるいっていうか羨ましいっていうか……」
 フラグ建築士と関わってしまった黒子の苦悩は終わらないのである。


343 :戦国武将に信長の野望をやらせてみた ~あの世編~:2011/07/02(土) 22:57:56 ID:4322JIo6
【明智家 第八十ターン 原作でやれ】


「おっしゃあああああ! 待ってました長宗我部! これで秀吉の奴に対抗出来る!」
 おにぎり片手に歓声を上げるのは上条当麻である。
 もやし炒めをはしで取りつつ、コントローラーを操作しているのは光秀だ。
「ふう、これでようやく一息、ですね。中国大返しなんてやられてはたまりませんし」
 美琴はコロッケをそそーっとつつき、思い切ってぱくりと一口。
「あ、おいし」
 思わず出た美琴の本音に、当麻はこれでもかっつーぐらいのどや顔である。
 何かちょっとむっとしたので、光秀よりコントローラーを預かり、誤魔化すように画面を確認する。
「……ねえ、松永久秀の忠義また下がってんだけど……」
「何いいい! またかよ! こいつ何なんだよ一体!」
「いやぁ、実にらしいですねぇ。優秀な所といい、歴史と実際とでこうも評価が重なっていると嬉しくなってきますよ」
 美琴は少し興味深げだ。
「へえ、どんな人だったの?」
「卑怯で卑劣で陰険で執念深くて、ですが、何処か美学を感じさせる人、でしたねぇ。何でも遺体は晒さじと末期に爆発までしたらしいですし」
「…………聞いた私が馬鹿だったわ」
 話しても無駄と即座に見切る美琴さん。
 気を取り直すつもりでコロッケをもう一口ぱくり。
 調理場で聞いた話の事もあり、どうにも、味付け以上においしく感じられてしまう美琴。
「ね、ねえ、あの、さ……」
 服の裾を引っ張られ振り向く当麻。
「ん?」
「えっと……おい、しいわよこれ。ありがと」
 じーっと当麻は美琴を見つめる。
 ちらっとこの視線を受け止め、すぐ赤面して目を逸らす美琴。
 それでも気になるのか、再度当麻に目を向けると、やはり当麻はそのまま美琴を見つめ続けていた。
「お前……」
「な、何よ」
「実は美坂妹と入れ替わったりしてないか? いやほら、幾らなんでもその素直さはありえねえし」
 部屋全体が揺れる程の電撃に、当麻は後ろも見ず走り去ろうとして失敗した。
「今のは君が悪いですねぇ」
 光秀が当麻の後ろ襟を、鎌で引っ掛けるようにして持ち上げたせいである。
「ちょっ!? 何故に故に当初よりの仲間であるこの俺をおおおおおお!?」
「いえ、その電撃がゲームに当たりでもしたら事なので」
 当麻を引っ掛けたまま鎌を壁に放り投げると、ずがーんと突き刺さり、宙吊りになった当麻君は、憤怒に震える美琴さんの顔を真正面より見る事になる。
「待てっ! 落ち着け! よーくわかった! うん、これは何処からどう見ても御坂! お前だ! 妹とかありえないっつーか妹だったらここまで怒らねえしそもそもこんな強烈な電撃ありえねえ。な、わかった俺が悪かったやめて許してごめんねぷりーず……」
 当麻必死の懇願も届かず、電撃をさんざっぱらぶち込まれた後、素手にて制裁を加えられるのであった。

「どうやら伊達と真田はぶつかるみたいです。これは重畳、この間に中国まで抑えられれば随分と楽出来そうですね」
 当麻をぼこりながら美琴も話に加わる。
「あー、そうそう、旧織田軍使ってそのまんまもう一軍団作っといて。そっちは直接四国狙わせるから」
「二正面作戦ですか?」
「ちょっと無理する事になるけど、そのぐらいやっとかないと、多分東の連中に追いつかないわよ」
 ふーむ、とちょっと頭を傾げた後、美琴の意図を察する光秀。
「伊達、真田、どちらかがどちらかを吸収したら、確かに手がつけられなくなりますか。わかりました、その手でいきましょう。細部の計算はお任せしてよろしいですか?」
「あー、ちょっと待ってね。今トドメ刺すから」
「はいはい、トドメは大事ですよ。でも、ほんの僅かに息を残しておくのもまた乙というもので」
「ん、わかったわー」
 全てが終わると、美琴と光秀は並んであーでもないこーでもないとゲームを進める。
 そして、壁面に吊るされたままぐったりと項垂れる当麻。
「……ふ……こう、だ……」
 そう呟くが、この結果は運不運ではないと思われる。


344 :戦国武将に信長の野望をやらせてみた ~あの世編~:2011/07/02(土) 22:58:28 ID:4322JIo6
【伊達家第百四十二ターン 竜の憂鬱】


 伊達VS真田決戦は、対上杉戦において兵の消耗がある伊達家が不利な立場にあった。
 開戦当初より、政宗が大騒ぎして決戦を主張しているのを、小十郎と美穂子の二人はさくっと無視して撤収に専念している。
 如何に捕虜にした旧上杉勢を登用しつつ多くの兵を撤退させるかが伊達軍の焦点となっていた。
「だーから何だってまた俺が殿やってんだ小十郎おおおおおおおおお!」
 やはり政宗の抗議は黙殺。実に哀れを誘う。
 落城までぼこぼこに叩いた上杉の城は、そのほとんどが篭城に耐えうるものではないと判断されている。
 一息に伊達領まで下がってしまうのも手ではあるが、それをやっては旧上杉武将の捕虜を逃がす事になってしまう。
 登用が落ち着くまででも、何とか堪える必要があった。
「……最近さ、俺の右目が何処Lookingしてんだかわかんねえんだ……」
 とりあえず政宗を見てはいないだろう事だけは良くわかった。何より美穂子と組んで軍略を練る小十郎の楽しそうな事楽しそうな事。
「そうですか」
 美穂子も美穂子で士郎との会話に触発されたか、今川北條への工作などを嬉々として始めている。
「……やっぱさ、何てーのかな、小十郎無理でもしてやがったのかな。死んじまったせいで俺の面倒見なくて良くなったから活き活きしだしたとか、かなりShockなんだよな……」
 真田方もまた同様に後方撹乱を仕掛けてくると読み、小十郎は国境付近にも兵を配備せている。
「はぁ、そうですか。頑張ってください」
「いや頑張るっつーか、俺の頑張り所全部取られちまったっつーか……っておい、お前Listen、聞いてんのかよ」
「はいはい、聞いてますよー……ウマイ!」
「どわっ! いきなり叫ぶんじゃねえ! それとその異常な調味料の山は何だ! てめぇ料理なめてんのか!」
 伊達政宗君が、あまりに二人が構ってくれないので、とりあえずもう一人声をかけて連れてきた相手ヴァンは、どっからか用意してきた自分用の食事にめったくそ調味料をぶっかけて食っていたりする。
 ヴァンはがつがつと一気に全てを食い終えると、皿と調味料の山を持って立ち上がる。
「ごちそうさまでした」
 そのまますたすたと部屋を後にした。
「一体何しに来やがったんだてめぇは!」
 政宗の怒声つっこみが虚しく響く。どう考えても、こんなのを話し相手に選んだ政宗のミスであった。
 そして、そんな風に政宗が遊んでいる間にも状況は動いていく。
 旧上杉武将登用に見切りをつけた伊達軍は、反攻に移るべく兵力を集中し、一大決戦の構えを見せる。
 そしてここでも出るのである。このゲームにおける上杉謙信と並ぶ反則の双璧『武田信玄』が。
 これを迎え撃つは無論、伊達軍最強の将、伊達政宗。
「……なんかもー、後世における俺の扱いってのがよーくわかる感じだよなコレ」
 目も当てられぬ程のふるぼっこであるが、まあ、政宗の名誉の為に付け加えると、彼でもなくば武田信玄をここまで押さえ込む事は出来なかったであろう。
 向こうの部屋からの『おやかたさまあああああああああ!』な雄叫びが聞こえてくるようである。
 伊達軍がいの一番に登用した上杉謙信は、他登用武将と共に忠誠度が上がるまでは後方に引っ張り込んである為、ある戦力でどうにかするしかない。
 それでも、東北のほとんどを既に抑えていた伊達軍は何とか五分に渡り合い、一進一退の攻防が続く。
 そこに、もう一軍が雪崩れ込んで来たのは、両軍の疲弊が座視出来ぬ程になって来た頃であった。
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