366~375


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366 :名無しせずにはいられないな:2010/01/21(木) 03:44:51 ID:09NMNEuY
安土城ラジオブース。
本来ならば、その名の通り来る死者相手のラジオを目的とする施設だが、
今に置いてのみその役割は異なる。

「いよいよですわね」
「皆さん、大丈夫でしょうか……」

ブースは現在、普段のラジオでは想像もつかぬほどの大人数が集っていた。
オペレーション「逆」メテオを行なうにあたり、このブースは避難所兼オペレータールームと化したのだ。
誰もが息を呑み、現場へ立つ勇士達へと思いを馳せる。

「皆さん、お願いします!!」

ラジオ用のマイクを用いて、小萌が各自へと呼びかける。
大量の落下物による、死者スレ崩壊の危機。
それを救う為の作戦……オペレーション「逆」メテオが今、はじまった。



◇◆◇



「さあ、いつでもきなさい!!」

地上で待機を行うは、対空迎撃要員たる美琴。
そして後方には、ディートハルトを中心とする撮影スタッフ一同が立ち並ぶ。
当然、戦う術を持たぬ彼等にも避難勧告は出した。
しかし、そこは映像屋としての意地とも言うべきか。


367 :名無しせずにはいられないな:2010/01/21(木) 03:45:36 ID:09NMNEuY
『どの道、この死者スレが崩壊すれば全て同じ。
 ならばここは、最も良きポジションにて待ち受けようじゃないか』

ディートハルト達の返答はこの一点張りであり、断固としてその場を離れようとはしなかった。
当初は力ずくにでも離すべきだという意見も出たし、事実何名かは強行に及ぼうともしていた。
しかし……それを拒む者達もまた、彼等と同様に存在していたのだ。

『作戦の邪魔をされるというわけではないし、何より彼等とて命を賭けてこの場にいる』
『これが彼等の戦いであるというならば、その意志は尊重するべきではないか』

立場は違えども、命を賭けた作戦に立つ同士。
そう撮影スタッフの行動に敬意を払い、多くの者達が立会いを許す声を発した。
やがては反対派もその言葉に折れ、そして今に至ったのだ。


……ここで一応注意をしておくが、立会いを許したのはあくまで撮影スタッフの断固とした決意によるものである。
イメージビデオが欲しいから彼等のご機嫌を取った、なんていう陳腐な理由ではない。
そんな事は無い……


……今は、そう信じる事にする。



◇◆◇



「皆、来るぞ!!」

天井―――そう呼ぶべきか否かはいまいち分からないが―――付近まで飛翔し、刹那が声を出す。
聞こえてくる軋音は徐々にその大きさを増し、地上へと降り落ちる塵もまた同様だ。
崩落までの時間は、恐らく後十秒にも満たないだろう。


368 :名無しせずにはいられないな:2010/01/21(木) 03:46:17 ID:09NMNEuY
「キャスター、頼みます!!」
「ええ、任せて」

セイバーの呼びかけに答え、キャスターが先陣に立つ。
オペレーション「逆」メテオの目的における障壁は二つある。
一つは言うまでも無くエクシアの太陽炉であり、そしてもう一つが、共に降りかかる瓦礫の山だ。
太陽炉を押し返す以前の問題として、もしもその瓦礫が誰かに直撃でもすればどうなるか……答えは言うまでも無い。
そこで、それを防ぐべくキャスターの魔術による防御が必要となるのだ。
彼女を防衛役に回し、また地上の美琴を落下物の迎撃に当てる事で、残るメンバーを太陽炉に専念させる。
負担をキャスター一人に大きくかけてはしまうものの、現状ではベストと呼べるだろう策である。



――――――ミシッ……!!



巨大な破砕音と共に天井に亀裂が走る……崩落の合図だ。
誰もが息を呑み、襲い来る事態に備える。


そして…………天井が、ついに音を立てて崩れた。



――――――バキャァッ!!



崩れ落ちた天井の一部が、まずは空を舞う六人を襲う。
破片と呼ぶにはあまりにも大きく、直撃すれば命の保証は出来ない。
されど、相対するはキャスターが展開する強固な魔力による防壁。
この程度の相手ならば、どうという事は無い……!!


369 :名無しせずにはいられないな:2010/01/21(木) 03:47:49 ID:09NMNEuY
「よし……太陽炉の姿を一瞬でも確認できたら、俺が合図を出す。
 一気に突入するぞ!!」

キャスターが防衛に専念してくれる今、残る相手は太陽炉のみ。
刹那は一瞬でもその姿が見えたならば、その瞬間に突入を図るつもりでいた。
誰しもが天を見上げ、その時を待つ。



だが……この時、彼等には一つの大きな誤算があった。



「ん……?」

ふと、小十郎の手に何かが落ちてくる。
最初は天井より落ちてきた塵かと思ったが、すぐ後の感触より違うと気付かされる。
手に感じたのは、僅かな熱気と……そして水分。

「湯だと……?」

それは、湯の雫だった。
小十郎はこの事に、疑問を抱く。
何故なら落下物は全て、会場にて破壊された施設や建造物の筈。
ならばどうして、湯が落ちてくるというのか。

「……いや、待て。
 そう言りゃ太陽炉が元々あった場所は……!!」


370 :名無しせずにはいられないな:2010/01/21(木) 03:48:37 ID:09NMNEuY
ここでようやく、彼は自分達が犯していた大きなミスに気付く。
そう……彼等は落下物が太陽炉を除いて全て、瓦礫であると判断していた。
しかし、崩壊した施設には一箇所だけその判断をぶち壊す場所があった。
それこそが、太陽炉の設置されていた場所……即ち。



大量の湯を溜め込んだ、スパ施設である……!!



―――バッシャァァァァァァァッ!!!


「…………!?」
「な、何とぉっ!?」


音を立て、とてつもない量の温水が流れ落ちてくる。
それは瓦礫なんかよりも、遥かに厄介な相手だった。
強烈な湯気が立ち込め、宙に飛ぶ者達の視界を白く塞がれてしまう。
これにより、太陽炉の視認難易度が高まり突入のタイミングを掴む事は難しくなる。
唯一、防壁が機能して湯の圧力を防げている事が幸いだが……

「まずい……このままじゃ!!」

そう、防げているのはあくまで空中にいる者達だけ。
液体である湯は、瓦礫と違い防壁で砕き散らす事が出来ない……落下はどうあっても阻止できない。
そして、砕き散らせないという事は……


371 :名無しせずにはいられないな:2010/01/21(木) 03:49:21 ID:09NMNEuY
「逃げろ、御坂美琴ォッ!!」

地上で迎撃に当たる美琴に、これを迎撃する手立てが無い……!!



◇◆◇



「嘘……!?」

美琴は空から飛来する温水を前に、驚きを隠せなかった。
瓦礫の類ならば、超電磁砲で簡単に破壊できる。
しかし、液体相手では幾ら砲撃を打ち込もうとも砕けるわけが無い。

「逃げろ、御坂美琴ォッ!!」

刹那の叫び声が、上空より響き渡る。
このまままともに激流を浴びてしまえば、水圧で体は容易く潰されるだろう。
彼の言葉どおり、逃げを選択するのが一番なのかもしれない。
事実、後方の撮影スタッフは既に数名が撤退の準備を始めているではないか。

「……でも……!!」

しかしここで逃げては、残る飛来物からの地上防衛役がいなくなる。
そうなれば、例えこの場では助かったとしても、死者スレの受ける被害は結局の所多大。
もしも安土城まで及べば、守るべき者達の身でさえもタダではすまない。
ならば、どうすればいいというのか。


372 :名無しせずにはいられないな:2010/01/21(木) 03:50:12 ID:09NMNEuY
(激流に耐えつつ、飛来物を全て打ち落とす……無理よ。
 そんな無茶、出来る訳がない……!!)

頭を過ぎるのは、実行できる筈も無い幻想だ。
美琴は非情の現実に対し、表情を歪めてしまう。
打つ手はもはや、完全になくなってしまったというのか……?




―――諦めてんじゃねぇよ、ビリビリ!!




「え……?」

そんな最中だった。
聞こえる事がありえない筈の、『あの男』の声が彼女の脳裏に響いた。
とっさに周囲を見回すも、当然ながら姿が見えるわけが無い。
半ば意識が混乱したが故の幻聴だろうか。

(……そうよね、あいつがここにいる訳が無いわ。
今だって、殺し合いを止める為に向こうで頑張っているのに……)

そう、上条当麻がこの死者スレにいる訳が無い……来てほしくも無い。
彼には生きて、このバトルロワイアルを止めてもらわねばならないのだ。
こんな場所に来てしまえば、迷惑もいいところじゃないか。

「……でも……ありがとう。
 あんたのおかげで、助かったわ」

だが……その幻聴のおかげで、美琴からは迷いが消えた。
もしもこの場に彼がいたならば、きっとこんな迷いは抱かない。
誰も倒すことは出来ないと思われていた、学園都市最強の能力者を相手にした時だってそうだった。


373 :名無しせずにはいられないな:2010/01/21(木) 03:50:57 ID:09NMNEuY
守るべき者の為、最後の最後まで足掻き抜き、無茶を成した……
無理という『幻想』をぶち壊したじゃないか。

「だったら、今度は私の番。
 ここにいる皆の為に……!!」

あいつに出来て、自分に出来ないわけが無い。
迫り来る激流を前に、美琴は強く両手を掲げる。
出来る訳が無い、無茶にも程がある。
幻想に過ぎないと、そう誰しもが思うだろう……上等だ。
そう思われるのであれば……!!


「その幻想を……ぶち殺す!!」



◇◆◇



「これは……!?」

ディートハルトは、眼前に広がる光景に驚嘆の声を上げた。
蒼白い稲光と、離れていても感じる莫大な熱量、立ち込める蒸気。
全ては美琴が発したものであった。
彼女が取った行動は、迫り来る激流に対し持ちうる最大の電流をぶつけるという単純明快なもの。
その放電熱を用いて、全てを蒸発しきろうという荒業であった。
額に浮かぶ汗や表情を見る限り、消耗が激しいのは丸分かりだ。
かかっている負担は、半端な物ではないだろう……だが。
もはや彼女の瞳には、諦めの色は一切無い……!!


374 :名無しせずにはいられないな:2010/01/21(木) 03:51:28 ID:09NMNEuY
「幾ら死者スレでは全ての制限が解除されてるとはいえ……なんて威力だ。
 これが、レベル5……おいカメラ、一瞬たりとも逃すな!!
 こんなの、滅多に撮れる絵じゃない……ここでやらなければ、一生後悔するぞ!!」

撮影スタッフもまた、興奮せずにはいられない。
全ての者達が、食い入る様に美琴へと視線を集中させる。


そして……!!


「っ……流石に、半端じゃないわね……でも!!」

全ての激流は今、蒸気へとその姿を変えた。
美琴は幻想を見事に殺しきったのだ。
そして、間髪入れずにコインを抜き取り頭上へと構える。
後は、残る飛来物を全て迎撃しきり、道を切り開くのみ……!!

「まだ……頑張れる!!」

美琴の手より放たれた超電磁砲の一撃が、飛来物を打ち砕きなおも直進。
立ち込めた蒸気はその一撃に切り裂かれ、かき消されて視界がクリアになる。
そう……それはそのまま、空に浮かぶ者達の援護となる……!!



◇◆◇



「美琴……助かります!!」

超電磁の一撃が蒸気を切り裂いたおかげで、視界が晴れた。
これで太陽炉の姿を無事に確認する事が出来る。
後は、タイミングを見計らうのみ。


375 :名無しせずにはいられないな:2010/01/21(木) 03:52:19 ID:09NMNEuY
「……見えた、エクシアの太陽炉だ!!」

やがて刹那が、無数の瓦礫の中よりエクシアの太陽炉を見つけ出す。
同時にファングを真正面から飛ばし、そして忠勝が続いた。
キャスターは彼等を援護すべく、なおも周囲の瓦礫を蹴散らし。
美琴もまた、地上からの迎撃に専念している。
彼女等の頑張りを無駄にしない為にも、後は自分達に全てがかかっているのだ。
何としてでも、このオペレーション「逆」メテオを成功させる……!!

「うおおおぉぉぉぉ!!」
「…………!!」

刹那が、セイバーが、幸村が、小十郎が吼える。
忠勝がその瞳を光らせ、闘志を燃やす。
各々が、持ちうる全身の力を込め……!!



――――ガシィッ!!



今……エクシアの太陽炉を掴んだ……!!
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