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345 :戦国武将に信長の野望をやらせてみた ~あの世編~:2011/07/02(土) 22:59:10 ID:4322JIo6 【徳川家 第百$&ターン ソレスタルビーイングあの世支部】 「刹那・F・セイエイ、ホンダム、紛争に介入する」  これまでひたすらに沈黙を守り続けていた徳川家が、急遽兵を挙げ攻め寄せてきたのだ。  徳川軍の狙いは、当初真田軍であると思われたが、刹那と忠勝、もといホンダムは容赦なく伊達軍にも宣戦を布告してくるではないか。  混乱も壊走もせぬ卑怯技術『三河魂』をひっさげて、ひたすら内に篭もっていた鬱憤を晴らすかのように暴れまわる。  本来、一国のみで鎖国していた徳川が、他国を吸収してきた伊達、真田を向こうに回すなぞ無謀にも程があるのだが、何故か十二分な戦力を持ってこれと対する。  その秘密の一部を担うデュオ・マクスウェルは、キーボードを大きく叩き頭を抱えていた。 「っだー! これ以上こんなの見てられっかああああああ!」  刹那はこれで三度目になるデュオの癇癪にも、律儀に返事を返してやる。 「辛いのなら少し休んでもいいぞ。俺達は既に充分世話になっている」 「そいつはそこの仏頂面に言ってやってくれ」  デュオの指差す先、のんびりと壁によりかかりながら昼寝を決め込んでいるのはヒイロ・ユイである。 「俺は俺の仕事をした。お前はお前の仕事をしろ」 「ふざけんな! お前持ってたツールでデータ吸い出しただけだろうが! こっちゃ解析から何からぜーんぶ自力だぞ畜生!」 「仕事を効率よく進められるかどうかは個人の能力差だ。つまり、お前の能力が低いせいなのだからその分手間をかけろ」  ヒイロはこのゲームのデータを引っ張り出し、完全なコピーを別端末に作り出したのだ。  これを元にエディター自力で作った挙句解析を行っているのがデュオな訳で。  結論というか、つまる所、刹那、ホンダム組徳川は、チート(ゲームデータいじってするズル)にて勝負を挑んでいる訳だ。  ヒイロはふうと嘆息する。 「ゲーム終了までに解析は済みそうにないな。これでは意味が無い」 「……いや、今更だけどよ。こういうのってアリなのか?」 「与えられた条件は一緒だ。それをどう受け取るかはプレイヤーの裁量だろう。尤も、お前の腕が悪いせいでさして優位になれたとも思えないが」 「…………お前、さ。ここ来てからすげぇ意地悪くなってねえか?」  ヒイロはふいっと目線を逸らす。 「刹那が占領を良しとしない以上、勝利するには相応の手段が必要だ」  今度は刹那にジト目を向けるデュオ。 「っつーか、占領無しで全戦力を粉砕しろなんて無茶苦茶だろ。なあ、タダカツも何か言ってやってくれよ」 「…………」  無言のままのホンダムに代わって刹那が言ってやる。 「ホンダムも俺の意見に同意してくれている。ガンダムマイスターの俺が、例えといえ武力侵攻を肯定する事は出来ない」 「へいへい、そっちのガンダムは随分とややこしいのね。まあいいさ、同じガンダム乗りの誼で付き合ってやるって言ったのは俺だしな、何とかやってみるさ」  そんなデュオの背後より、ひょいっと顔を出して来る黒桐幹也。 「こっち、とりあえず見てみたけど、専用の解析ツール使わないと多分無理だよ」  馬鹿真面目に作業をしていたらしい幹也を見て、思わずその両肩をがっしと掴むデュオ。 「お前もあの女と付き合ってただけあって、苦労してきたんだろうなぁ。わかるっ、わかるぜ。無愛想で何考えてんだかわからん癖に動き出すととんでもねえ事平然とやってくれるような奴と付き合う辛さは」 「あ、あはははは、色々と式が苦労かけたみたいで」  そんな繋がりで手伝う事にしたらしい。実に人の良い男である。  その人の良い男が、渋面を見せながら一つだけ、抗議を口にした。 「それで、さ。その、あそこの二人、というか一人と凄いのというべきか。何とかならないかな」  幹也言う所の二人は、やったら広い部屋の半分近くを使用しており、騒音やら時折欠片やらが降ってきて迷惑この上無いのである。 346 :戦国武将に信長の野望をやらせてみた ~あの世編~:2011/07/02(土) 22:59:41 ID:4322JIo6 「フン! 狂気に囚われていたなどという言い訳、この俺には通用せんぞヘラクレスとやら!」 「…………」  張五飛とバーサーカー改めヘラクレスさんが部屋の半分を使ってバトっているのである。  何故にバーサーカーがここに居るかといえば、似た者同士な本田忠勝さんとの他者には理解不能な意思疎通によりこの部屋に来たらしい。  そこに五飛が顔を出して来た為、このような仕儀と相成ったわけだ。  やるせない顔で頭をぐしゃぐしゃにかき乱すデュオ。 「あー! 嫌だ嫌だ! どうしてこうガンダム乗りってなややこしいのしかいねえんだよ! 刹那! お前ん所もこんなんばっかかよ!」  憮然とした顔で答える刹那。 「張五飛の事を言っているのか? 好戦的なガンダムマイスターなど、存在意義に関わる」 「へぇ、ならみんな大人しく言う事聞くような奴ばっかなのか?」 「…………」 「そこで返事に困るなよ! ……幹也、お前これから体鍛えてパイロットやる気無いか? ほら、ウチならカトルみたいなすげぇ優しい良い奴もいるしさ」  ヒイロは意地悪なのか真面目に考えたのかわからん調子で言ってやり、幹也も幹也で即答したり。 「その男に自爆が可能とは思えない」 「ああ、うん、それは無理だ」  ガンダムに対する考え方が著しく違う刹那は、大層驚いている。 「まさか、ガンダムで自爆したのか?」 「おー、したぞー、そこの馬鹿は。それでもぴんぴんしてるヒイロを、どうやったら殺せるのか今でも不思議でならねえよ」  ヒイロの眉根に皺が寄る。それを、デュオは目ざとく見つけていた。 「……あれ? お前の機嫌悪いのってもしかして……負けて死んだのが悔しいとか?」 「必要な事は為した。生死は結果だ」 「ほーほー、なるほど。ヒイロ君はやっぱりというか何というか、負けず嫌いでいらっしゃいましたか。ははっ、そうだよなぁ……」  そこまで口にして、デュオは口篭った後、それ以上の追及を止めた。 「止めた。何か俺まで腹立って来たし」  一線で戦う猛者達が、負けて笑っていられるわけないのである。  ともかく、徳川チームは解析班二人、ゲーム班二人、見物一人、番外戦闘二人で進められている。  ややこしいのを承知で五飛を呼んだのはヒイロである。  そしてヒイロがこの部屋に居続ける事にも、無論意味がある。  ガンダムに携わる程技術レベルの高い者を、この徳川チームに集中させておけば、この分野においては他を圧倒出来る。  そういう意味では、同じ世界だからとてリリーナを呼ぶ必要は無い。別に、負けて死んだのが恥ずかしいから顔合わせたくないとかは思ってないはず。  デュオを苛める為に部屋に残ってるわけでもないはずなのである。  ゼクスもトレーズも顔見るとムカッと来るといった話でもなく、この二人は間違ってもチートに手を染めるような真似はすまいと見切っての事。  更に言うなれば、共に行動した者だからとてファサリナに声をかけないのは、あの独特の調子で迫られるのが嫌だとかではなく、呼んでも意味が無いからである。多分。  会場に集められた中でも最高レベルの科学技術を持つ彼等ならではのアプローチであるが、刹那の出す条件の厳しさから全てを圧倒的にとはいかず伊達軍、真田軍との戦闘は次第に泥沼化していく。  それは俺の仕事ではないと、部屋の隅でのんびりしていたヒイロだったが、不意に五飛に声をかけられる。 「おい、いいのか?」  ちらとそちらを見やり答える。 「何がだ?」  バーサーカーとの戦闘は一時休戦なのか、五飛独特の小憎らしい癇に障る口調で彼は言った。 「貴様も気付いていないのか。明智軍の進軍速度が鈍化したぞ」 「…………」  それが意味する事を少し考えた後、ヒイロは舌打ちする。 「しまった……奴等、軍を溜めているのか」 「そういう事だ。連中が動き出してからでは手遅れになるぞ」  ヒイロは熟考を重ね、結論を出す。 「いや、既に休戦しても間に合わない。直接妨害の必要がある」  五飛は至極真面目な顔で語った。 「たかがゲームの勝敗に何処まで拘るつもりだ。非常識な奴だな」 「…………」 「前々から思っていた。貴様はもう少し世間の常識と社会性を身につけろ。そんなザマでどうやって潜入任務をこなすつもりだ」  ヒイロでなくても、ものっそい言いたい事に満ち溢れてしまうであろう。  にらみ合う二人の間で火花が散っていたかどーかはわからないが、こんな二人を見てふるふると震えているデュオに、刹那が一言言ってやる。 「興奮しすぎると体に悪いぞ」 「ほっとけ!」 347 :戦国武将に信長の野望をやらせてみた ~あの世編~:2011/07/02(土) 23:00:49 ID:4322JIo6  五飛の懸念は真実のものであった。  三軍入り混じった戦闘が続く中、ある時三軍の軍師達が皆一様に驚きの顔を見せる。  九州地方、四国地方は丸々CPU領土であったはずなのだが、これらが僅かな間に明智家の手に落ちたのである。  直後、伊達家、真田家、徳川家の三軍は、同時に明智軍の宣戦布告を受ける。  モニターが開き最初に出て来たのは、やったら得意顔の上条当麻君であった。 「いやーっほう! 諸君! 時間稼ぎご苦労! おかげで準備は万全だぜ! 俺達の勝利は確定だがせいぜい足掻いてくれたまえよ!」  しかしこの上条、実に感じが悪い。  占領直前止めは光秀のアイディアであるし、各地の戦力配分は美琴の計算と読みのおかげであるのだが、知らん知らーんと絶好調な当麻。  はいはいわかったわかった、アンタは凄い、と超適当に当麻が後ろに引っ張られると、今度こそ本命、明智光秀が画面に映る。 「さて、こういった仕儀に相成ったわけですが……どうします? いっそ皆さんで協力して、私と戦いますか? 正直に申しますと、一人一人はもう面倒なのですよ、ね」  笑わすなと光秀のデカイ態度の理由に気付いていない政宗。  おのれえええええ、と顔見ただけでやる気マックスな幸村。  その辺は超さておいて、伊達家、真田家、徳川家の黒幕達は同時通信可能なのをいい事に顔を見合わせる。  まずは小十郎。 「……ここで全軍に布告って事ぁ、それでも勝てる算段ついてるって事だろうな」  次に黒子。 「ぬ、ぬかりましたわ……占領止めを行なったとしても、直後に侵攻は不可能だと踏んでいたのですが……ここまで徹底してくるとは」  刹那はモニターの後ろの方を一度ちらっと見て、そちらから快い返事がもらえなかったらしく、険しい表情で向き直る。 「まだ終わってはいない、不利と敗北の間には越える事の出来ない大きな隔たりがあるはずだ」  実に緊迫感に満ちたやりとりが交わされる中、状況を弁えていないのが二人程。 「あの二段城攻め、良く見破ったね衛宮君」 「あれ福路の策か。俺完全に引っかかってた。真田さんとセイバーの勘がなきゃ危なかったよ」 「ふふふっ、皆で協力するのがチーム戦だものね」 「俺さ、チームでってのあまりやってなかったから、ちょっと新鮮だよ」 「そうなの? 衛宮君ならどんなメンバーでも上手くやっていけそうだけど」 「どうだろうなぁ、それより……」  そこで、二人はもんのすごいジト目で見られている事に気付き、真っ赤になって引っ込む。  色々と相談をせねばならぬ手前、皆がこれに突っ込むのは後だと思っていたのだが、凄まじい勢いで食いついて来た奴がいた。 「衛宮ああああああああ! お、おまっ! その子にまで! その子って確か別世界出身だろ! いやまあ黒子もそーだが……一体お前向こうで何やってたんだあああああああ!」  と、やったらやかましいのは明智陣営のマスコット(実務で役に立ってないの意)上条当麻である。  士郎も士郎でムキになって怒鳴り返す。 「ばっ、ばかっ! そういうんじゃないって! 一緒に戦った仲間だよ! 大体、俺は構わないけど、そんな事言ったら福路が気を悪くするだろう」 「え、いえ、その、嫌とかそういうんじゃ……」  赤面する美穂子を見て、殴り飛ばしたくなるような笑顔をする当麻。 348 :戦国武将に信長の野望をやらせてみた ~あの世編~:2011/07/02(土) 23:01:23 ID:4322JIo6 「へー、そーなんですかー、それはそれはー」 「あーもう、上条だって仲間ぐらい居たろ」  士郎の反撃が珍しかったのか少し驚いた顔になる当麻は、ふと、自分が出会った仲間、というか、所謂そーいう出会いに関して思い出してみる。  二人の悪夢が出て来た。 「……なあ、一つ聞かせてくれ。その子、いきなり人の顔見て思いつく事すら出来ないような悪口雑言並べ立てたり、しない?」 「怒るぞ。福路は一生懸命で、優しい子だよ」  すがるように、言葉を重ねる当麻。 「じゃあさ、人を見て類人猿呼ばわりとか、いきなり電撃ぶちこんできたりとか、しない?」 「するかっ。誰だそれ」  士郎の真後ろから、余計な事言ったらブチ殺すオーラを出す黒子の顔が見えたので、当麻君はそれが誰なのかを口にする事が出来なかった。  色んな意味でものっそいヘコんだ当麻は、モニターの端っこにしか映らない部屋の隅で、体育座りとか初めてしまう。  既にこちらに来ている二人の魔女が如何な人物なのかわかっていた美琴は、流石に哀れに思ったか声をかけてやろうと手を上げる。  そこで、士郎からの邪魔が入った。 「そんな顔すんなよ上条。正義の味方が泣くぞ」  驚き顔を上げた当麻は、その一言だけで、あっさりと機嫌を直して笑い出す。 「良く言うぜ」 「はははっ」  たった、一言二言のやりとりだ。  しかしそこには決して余人の入り込めぬ二人のみの空気があり、たったの数言で万の言葉を語り合ったように満足げに笑いあう。  互いが互いを好ましく理解している。心の奥まで踏み込ませたとしても、きっとわかってもらえると信じられる。  そう思える相手と出会える事の、何と幸福な事か。  神で原で駿で河な人とかには絶対に見せたくない光景である。  黒子は確信した。 『やはりっ……! 何処までも立ちはだかる気ですのね類人猿ッッッッ!!』  結局は、それがどんなものであれ、アレを倒さなければ黒子の夢見た未来はありえない。そう腹をくくった黒子は、小十郎(美穂子でないのがミソ)と刹那を説得にかかる。  まだ勝機はある。アレにだけは勝たせぬため、完全なる同盟を。 349 :戦国武将に信長の野望をやらせてみた ~あの世編~:2011/07/02(土) 23:02:02 ID:4322JIo6 【信長の野望 第二百四十三ターン そして終幕】  で、結局、負ける訳である。 「く、悔しいですわああああああああ!」  もうものの見事にぼっこぼこ。  上杉謙信だろーと武田信玄だろーと、明智家が続々繰り出してくる戦力を押し留めるまでには至らず。  東国の有力武将を一揃え並べる程の同盟を成立させたのだが、領土、経済、兵力、研究……辛うじて勝っていたのは頭数と武将の質ぐらいであるのだから、仕方あるまい。  対PL戦闘を最後の最後までせずに済んだ事が、勝因の全てであろうと思われる。  参加したメンバーが一同に介し、ゲーム後の雑談に花が咲く。 「Fuuuuuuuck! 納得いかねええええええええ! てめぇ明智光秀! 向こうでもこっちでも好き放題しやがって! もう許さねえ! 叩き潰してやらぁ!」 「おのれおのれおのれおのれええええええええ! よくも御館様をおおおおおおお! 如何にげぇむとて打ち首は許せんっ!」  特にエキサイトしてる二人と、ものっそい嬉しそうに迎え撃つ光秀は、まあ、雑談どころではないのだが。  光秀は一人、対して相手は二人。  これを見たバーサーカーは、無言のままホンダムを見やる。  ホンダムが静かにこくりと頷くと、バーサーカーは何と光秀に加勢してやる。 「貴様! この俺との対決を後回しにしておいて他の者と戦うだと!?」  更に五飛も参加し。  刹那はホンダムの腰をぽんと叩く。 「いいぞ、ホンダムも混ざってきて。俺の力が足りず敗れた憤りもあるだろう」  刹那のゴーサインをもらったホンダムも混ざる。一人、まともっぽい体の五飛が実に惨い形だが、あれで案外タフな男であり、何だかんだと戦闘は成り立っていたりする。  これを外より眺める小十郎は、しみじみと語ってみたり。 「本田忠勝と、バーサーカーとやらはまあいいとして、明智光秀が一緒になって戦うなんざぁ……」  実に誰得なしちゅえーしょんである。  そして他のメンバーである。  それぞれ思う所もあり、ゲームを終えた感想やら反省やらを語りたい相手もいる。  例えば。  黒子→士郎、美穂子→士郎、セイバー→士郎、とか。  そんな実に嬉しい状況の士郎君はというと、美琴→当麻、を放置の上条当麻君が一人で独占していた。  年の近い男の子同士である事も手伝って、女性陣はものっそい会話に混ざり難い。  別にえろとーくしてるとかではないのだが、物事への感じ方などがやはり同性同世代な分近しいので、合いの手一つ入れるのにも間がズレてしまうのだ。  話の中身もゲームに留まらず、それぞれの世界の違いやらお互いの身の上話にまで及び、お互いの持つちょっとしたエピソード一つ一つが、更に好意を深め合う結果となる。  もうこいつらさっさとくっついちゃえよな勢いである。  心底諦めきった顔で黒子は呟く。 「…………これ、世の女性は皆通る道なのでしょうか」  微笑ましく見守る影で、何処か少し寂しげな様子の美穂子。 「私にもわからないけど……どうなの?」  と彼女が話を振った先は、同じ男性かつめっさ若く見える、というか実際若いデュオである。  大仰に肩をすくめるデュオ。 「そういう部分があるのは否定しないけどな。それでも女の子放っといてってのはちと感心出来ないぜ。なあヒイロ」  嫌味ったらしい口調なのは、もちろんリリーナとの事を含んだ台詞である。  当のヒイロはというとガンスルー。  この程度でヒイロ・ユイが動じるはずもないのである。 「あ、こんな所にいましたかぁ」  妙に語尾が延びた口調に、動じないはずのヒイロの眉がぴくりと動く。  そちらを見もせず席を立つヒイロに、声の主は嫌がられている気配も気付かず近寄っていく。 「探したんですよ。あちらで是非ヒイロに会って頂きたい方が……」 「悪いが用事がある」  にべもないのだが、女性を主張する部位のやったら著しい人物、ファサリナはヒイロに腕を絡める。 「そうおっしゃらず。私で良ければ用事の方もお手伝いしますので」 「必要無い」  これをデュオは少し驚いた顔で見ていた。 「へぇ、お前その人には結構気を使ってんだな」 350 :戦国武将に信長の野望をやらせてみた ~あの世編~:2011/07/02(土) 23:03:12 ID:4322JIo6 「そうなんですの?」 「ああ、ソイツ、どうでもいい奴相手ならそもそも返事すらしないさ。無視出来ない相手だからこそ……」  そこまで口にした所で、ヒイロに睨まれ口篭る。  ファサリナはとても嬉しそうに顔を綻ばす。 「良いお話を聞けましたわ。ありがとうございます」  そんな事言ってる隙に、腕を不自然でない程度の力で抜き取り、さっさと逃げ出すヒイロ。  流石テロリスト。形勢不利と見るやの撤退判断は実に素早い。  これを追って部屋を出ていったファサリナを見送ったデュオは、ふむと一つ頷いた後、次に美穂子に目をやり、最後に黒子を見る。  美穂子にはまるで意味がわからなかったが、黒子は何を考えているか察したよーで、スカートの裾よりダーツを一本抜いてみたり。  慌てて言い訳するデュオ。 「っと、悪い意味じゃねえって。つまり、女の魅力ってなソコだけじゃないって話だろ」  異常にでっかい胸を持つコイツ等でも、思うように人生は運んでいない事を言ってるわけである。 「乙女心を一からレクチャーしてさしあげましょうか?」 「悪いが間に合ってる。デカイのに惹かれるだけの男なんざ、どうせ大した奴じゃないって事さ。美穂子も気をつけるんだぜ」  今一話についていってない美穂子は、はぁ、と首を傾げるだけである。  生活圏内での男性比率が低い美穂子は、自らの持つ凶器に気付けぬままらしい。  見た目に反して何やら老成してるようにも達観してるようにも見えるデュオの言葉に、黒子は口をへの字に曲げたまま。 「セイバーさんからは何か言う事は無いんですの?」 「もへっ?」  いきなり話を振られて驚く騎士王様は、とりあえず口の中のものをゆっくりと飲み込む。 「私は王であり、女王ではありませんから。女性の魅力云々に関して問われても何とも答えようがありません」 「……というか、さっきも延々食べてませんでした?」 「シロウの食事を残すなぞ、騎士の名折れです」  黒子なりにセイバーは色気より食い気なのかと納得した模様。  いわゆる一般女性の食い気からは若干外れてる気がしないでもないが、それも含めての返答と受け取ってたり。  黒子は、ちらと美穂子を見る。  母性をこれでもかと感じさせる顔形胸性格である。  片や会う度説教、挙句女性としての美しさにさして興味がない。片や女性らしさに満ち溢れている分優しさが前に出てしまい強く恋愛を主張出来そうにない。  確信を得た黒子は、顔を見られぬよう後ろを振り向く。  デュオからも見えぬその角度で、黒子は密かにガッツポーズを決めていた。 351 :戦国武将に信長の野望をやらせてみた ~あの世編~:2011/07/02(土) 23:03:42 ID:4322JIo6 『よしっ、ですわ! とんでもない美人だったり、特定部位がはちきれんばかりだったりするライバル達ですが……揃って恋愛には向いてなさすぎます!』  士郎も容姿だけに引っ張られるような人間にも見えず、ならば、押しの強さで黒子が極めて有利と考えたわけだ。  実は士郎、セイバーとの初見でエライ惹かれてみたり、遠坂凜を気にしていたりと、かなり容姿に引きずられるタチかもしれないのだが、それは黒子の預かり知らぬ所である。  尤も押しに弱いのも確かなので、黒子の判断もあながち間違えではないのだが、こうして見ると正に『黒』子である。  そして、抜け目無いデュオを誤魔化せるはずもなく、彼はやれやれとため息を漏らしていたりする。 「なあ幹也、お前さんこの道じゃ先輩だろ。何かアドバイスしてやったらどうだ?」 「それは構わないけど……式との事が参考になるか?」 「…………俺が悪かった」  実に失礼な会話が交わされるも、当人居ないので問題は無い。  最早ゲームも何も関係ない話になってきたのだが、そこに大暴れしてとりあえずは気が晴れたのか政宗が顔を出してくる。 「おいおいおいおい! 何かしみったれてやしねえか? 宴の席で何ごちゃごちゃやってやがんだ!」  基本性質は一緒なのか、同じく満面の笑みで現れる幸村。 「げにっ! 宴は楽しくやるものですぞ!」  これに合わせて、小十郎は用意していた酒を引っ張り出してくる。 「そうおっしゃると思ってましたよ。さあ、真田幸村も、ほら、そこのデカイの二人とちっこいの、お前等もだよ。後……気にくわねえがせっかくだ。明智、てめぇも混ざれ。逃げるなんて抜かしやがったらとっ捕まえてでも参加させるぞ」  飲酒オーケーな大人組が加わると、落ち着いた会であったものが、宴の名に相応しい馬鹿騒ぎとなる。  これが大人のやる事かといった勢いで騒ぐ皆であったが、全力で怒り、全力で悔しがり、その上で、全てが終われば全力で笑う。  そう出来るのが、大人なのではなかろうか。  学生組も勢いに乗せられてか、色恋云々もそっちのけで騒ぎに参加し始める。  全員が大騒ぎしていたわけではないし、それぞれ各人にあった楽しみ方であったが、皆がこの集まりをそれぞれの形で楽しめた。  この理由を、端的に政宗が言葉にしている。 「下戸だろうとなんだろうと、全力で勝負した後の酒が旨くねえわけねえだろ」  つまり、何だかんだと皆それぞれの形ではあれど、本気でゲームに参加していたという事であろう。

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