樺太キャンペーン「導入〜その1〜」
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■ケース1 ミカエラの場合 2070年棒月某日 日本帝国本土某所
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【GM/雅史】
「ったく厚かましいな、お友達! 長生きするぜお前はよ!」 目の前のお友達――何度かランをした間柄だ――は呆れ気味にそう言った。
【ミカエラ】
「ははは、誇らしいと表してほしいな?」
【GM】
ちなみに此処がどこかといえば、チームの皆で何度か密談にも利用した酒場だ。そこはいつも客が少なく、今日もまた周囲に客など殆どいない。
【ミカエラ】
褒め言葉を受け取ったかのように、嬉しがる娘。紳士服で男装なんぞしているが、似合ってはいる――この第六世界じゃ、大人しい趣味だ。
【GM】
マスターはキュ、キュと小気味の良い音を立ててグラスを磨いている。
【GM/雅史】
「――いやしかしまあ、これでもうお前みたいなビッチに関わらずに済むかと思うとせいせいするぜ」
【ミカエラ】
「まあ、気の持ちようは最大の健康法だよ東城君」「寂しいかい?」
【GM/雅史】
「嬉し涙が出て、寂しい涙と勘違いしそうなくらいだわ」
【ミカエラ】
「本当、君も機微を解しない男だね」笑いつつ「ここで一月の利いた事を言えれば完璧なのに」嘆息
【GM/雅史】
「俺の家にあるけったいなお前の荷物は後で送ってやる。落ち着いたらそのうち連絡しな。どうせ必要最低限のものはいつでも持ってるだろ?」
【ミカエラ】
「ああ。その点『我々』は楽といえば楽だね」
【ミカエラ】
魔法使いだ。設備を問い始めると青天井だが、最小限となるとサムライより身軽
【GM/雅史】
「だろう? で、もう聞き残したことはないな?」
【ミカエラ】
「君の愛の言葉を聞いていないな?」
【ミカエラ】
「……冗談だよ」手を振りつつ「まあ、死ににいくつもりは無いよ。また会えるさ」
【GM/雅史】
「そいつが欲しけりゃ帰った時にでもスキルソフトを持ってきな。偽物でもよければいくらでも吐いてやる」
【GM】
つまりそれは、生き残れというメッセージなのだ。
【GM】
そして、もういっちまえ、と厄介払いするように手を振る。
【ミカエラ】
「不器用ながら、愛情を感じるよ。それじゃ。ティルタンジェル公子の名誉にかけて。また会おう」
【ミカエラ】
席を立つ。結構なサイズのトランクを押し、旅立ちが始まる。
【GM】
そうしてミカエラはこの場を後にして路上に出るわけだが。
【GM】
そこで隣の気配が変わる。
【ミカエラ】
「――――」どこか拗ねた表情で街角を歩く。
【ミカエラ】
「やあ、君か」酷く無防備な声音だった
【GM/タム・リン】
「なー……お前、本当にまたどっか行くつもりだっけ? 樺太? それってかなり北の方じゃないか。寒いんじゃね?」
【GM】
マンディンには見えぬ姿で相棒がミカエラに声を掛ける。
【GM】
鎧姿に剣呑な槍を持っている。もし見えていたら一発で通報間違いなしだ。頑張れば、コスプレで通るかもしれないが。
【ミカエラ】
「寒いね。防寒用の羊毛製のスーツだって仕立てた。中々仕立て甲斐があったよ」
【ミカエラ】
周囲の奇異の視線を気にせず、その『友人』と会話を続ける
【ミカエラ】
「私ほどの立場と地位になったら、服にも気にかけねばならない。天然製のウールだ。君の感覚では理解しがたい物だろうが、今や第六世界じゃ価格が高騰するほどに貴重だ」
【GM/タム・リン】
「ここにも折角馴染んで来た頃じゃねえか。勿体ねえ」
【ミカエラ】
「そう、私は公子だからね。いつまでもここで燻ってはいられない」
【ミカエラ】
正気なのか狂気なのか。娘は己を公子と名乗りつづける
【ミカエラ】
「なあタム=リン。貴顕が貴顕たる条件はなんだと思う?」
【GM/タム・リン】
「知るか。俺が生きていた頃にゃ、そんな上等なお貴族様なんていなかったからよ」
【GM/タム・リン】
「でっかい田畑持ってればそれでいいんじゃねえの?」 まるで蛮族の考え方である。いやまあそうなのだが。
【ミカエラ】
「君が生きていた頃と変わらないはずだ――自分が何者であるか、証明することだ」両手を広げる。演説だ
【ミカエラ】
「私は、第六世界にて甦ったエルフの理想郷、国家ティルタンジェルの最高意思決定機関、14人の公子の一人である!」
【GM/タム・リン】
「うおー、カッコイー。言うじゃねえかミカエラ」 おお、そいつはいいなと手を叩く。どこまで本気で関心しているかは謎だが。
【ミカエラ】
「…と証明したいのだが、SINの持ち合わせが無い」赤面
【GM/タム・リン】
「世知辛いな、ほんと」
【ミカエラ】
「SINレスが己を証明するのは骨だぞ? 心当たりあるだろう? しかし、樺太ならありそうだ。中々に確度の高い情報でね」
【ミカエラ】
「樺太には、手がかりがある。私が公子だと証明に足る」
【GM/タム・リン】
「……なー、別に諦めてもいいんじゃねえの?」
【ミカエラ】
「何故だ?」少し怒気を孕んだ声
【GM/タム・リン】
「お前、そりゃあ茨の道よ? お前なら、別の身の立て方もできるだろう」
【ミカエラ】
「―――――」瞬きをしたあと「そんな事は、認めない」
【GM/タム・リン】
「まあそうだわな。お前、いっつもそれだもんな」 嘆息。
【ミカエラ】
「私の魔法の才能なら、ウェッジメイジとしてもまあ稼げるだろう。シャドウランナーも、刺激もあれば収入もある。他にも、適当なビッグボスに囲われ、そこで籠の鳥として――」
【ミカエラ】
そこで眉をひそめる。私は何を言っている?
【GM/タム・リン】
「――そのうち飽きて籠から抜け出すタイプだよな」
【ミカエラ】
「とにかく」咳払いする「まあ、諦められないんだ。私は約束の地・樺太にいく」
【ミカエラ】
「君も来てくれるだろう?」
【GM/タム・リン】
「まあな。可能な限りは付き合ってやるよ」
【ミカエラ】
「それでは決まりだ。何、君にも余禄はある。樺太はきっと楽しい事に満ちている」
【ミカエラ】
「魚介類は絶品だそうだ。一匹何か釣って饗してくれまいか?」
【GM/タム・リン】
「お前にとって楽しい事は、俺にとっては大概面倒ごとだって知ってるか? オイ?」
【ミカエラ】
「君の愛情表現は不器用だな」その返しはどうよ
【GM/タム・リン】
「―――んじゃ、何か手助けが欲しけりゃ呼びな」
【GM】
そう言い残して精霊は消えようとする。
【ミカエラ】
「さよならだタム=リン。素晴らしき妖精騎士にして、伝説の女たらしよ」
【ミカエラ】
詩を歌うように友人を評して、見送る。
【GM】
そして周囲には誰もいなくなる。路上には行き交う姿の人々が散見できるがそれは全て他人だ。
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【GM/タム・リン】
「……あそこまで来ると呪いだな。本気で救われねえ」
【GM】
誰にも見えぬ場所で精霊は唾棄するように言い放つ。
【GM/タム・リン】
「まあいいか。いつものように、結論は先延ばしだ」
【GM/タム・リン】
「しっかし樺太か。マジやべえぞ……」
【GM/タム・リン】
「あそこだけはまずいんだよなあ。運が良ければ――“本当に自分を証明できちまう”」
【GM/タム・リン】
「どーするよ、ほんと」 精霊は大いに悩んだが、だからといって妨害するのも躊躇われ――
【GM】
そのうち本当に考えるのに疲れて適当な精霊をナンパして問題を忘れることに決めた。
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■ケース2 鷹見の場合 2070年棒月某日 日本帝国本土某所
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【GM】
ある日の昼下がり、治安のおよろしい街区にある一流ホテルの喫茶店。飲み物だけで二十新円は取られるであろう店の中、鷹見は元妻と向かい合わせに腰を下ろしていた。
【GM】
そして妻……ではなかった、元妻は何を言うよりも早く鷹見のコムリンクに旅券を送りつけてきた。
【孝彰】
「……」 頼んだのは例によって紅茶である。ARではなく、本物の高級品を飲むのは久しぶりだ。薄めのストレートが、”鷹見”こと須々木孝彰の好みである。
【GM/鈴季】
「ああ、ここの払いは私持ちでいいわよ」 しれっと言う。
【GM】
そりゃそうだ。鈴季は天下の三浜の上級管理職様である。稼ぎは、並のランナーなど比較にならない。
【孝彰】
「それはいいんだが、これは?」 データ上の旅券を確認。行き先は……
【GM/鈴季】
「樺太行って。そうね、1年から2年くらい」
【GM】
理由の説明が無い。言えば言うこと聞いてもらえるに決まっているというこの態度。
【孝彰】
「いきなりだな。だが、俺は今はもう、君の部下では無いし……夫でも、無い」
【GM/鈴季】
「………だめなの?」
【GM】
えー、うそー、って感じの所作をする。いやまあこいつどこまで本気でそういうしな作ってんのかわかりませんけどねほんと。
【孝彰】
「……いや、行こう。でも、説明くらいはしてくれ。琴子と、弓子にも会いづらくなるだろうし」
【GM/鈴季】
「まあそうね。説明はきちんとする必要があるわよね」
【孝彰】
「あの二人も、元気なのか?」 口をつけた紅茶は、薄いはずなのに、何故か苦い
【GM/鈴季】
「ええ、元気よ。元気ってことがわかれば充分よね? 話の腰を折らないでくれる?」 ある意味最悪の女である。
【孝彰】
「僕が言うのもなんだけど、君のそういうところはなおした方がいいよ、あの子達の為にもね。……続けてくれ」
【GM/鈴季】
「どの口が言うのよ。………で、本題だけど、私異動することになったのよ」
【孝彰】
「ん? 君が? それはまた。左遷か、栄転か。御愁傷様と慰めるべきか、おめでとうと言うべきか」
【GM/鈴季】
「異動先はその旅券の行き先と同じ。豊原支社へと移ることになったわ。ま、左遷か栄転かといえば栄転ね。帰ってこられれば間違いなくもうワンステップ上へ行けるわ」
【孝彰】
「それはおめでとう……、うん。そういうことなら、喜んでついていくよ。1年か2年という数字も納得できる」
【GM/鈴季】
「でしょ? ま、その事自体はいいんだけど……」
【孝彰】
「あの二人をどうするか、か?」
【GM/鈴季】
「二人は実家に残すことになるでしょうね。で、あなたはそんなこと気にしなくていいの」
【GM】
とにかく冷たい妻。
【GM】
ではなかった。元妻。
【孝彰】
「だからそういうところ、子どもの前では見せてないよねぇ(泣き顔)」
【GM/鈴季】
「仕事の内容を詳しく言うことはできないけれど、凄く面倒なのよ。私がしなくちゃいけないことは」
【孝彰】
「うん」
【GM/鈴季】
「正直、半分くらいは生きて返ってくることができないって思ってる」
【孝彰】
「僕はもう社内の人間じゃぁないから、聞く資格はない……けど、君の力には、全力でなるつもりだ」
【GM/鈴季】
「話が早くて助かるわねー」
【孝彰】
「君もそれをわかった上で僕に話しているのだろうけれども、ならば必要なことぐらいは、キチンと話しておいて欲しいね」
【GM/鈴季】
「まー、直属の部下だって信用できるかどうか危ないのよ。ジョーカーの一枚か二枚握りこんで行くのは当然でしょ」
【GM/鈴季】
「そういうわけだから先に現地入りしてて欲しいのよ。私の方から何か頼むまでは好き勝手にしてていいから」
【孝彰】
「親無しの子どもを作るわけにはいかないからね。  ジョーカー、ね。また切り捨てられるカードにはならないようにしたいよ。あの時みたいなのは、もうゴメンだ」
【GM/鈴季】
「いざという時に土地勘がなくて使い物にならないだなんて御免だわ」
【孝彰】
「お互い、話がしやすくていいねぇ。涙が出てくる。わかったよ、明後日には向こうに入ろう」
【GM/鈴季】
「そうしてちょうだい。貴方のことだからどうせ荷物が多いんだろうけど、そのあたりは住所が決まったら柴田にでも送らせるわ」
【GM/鈴季】
「どうせ危ないオモチャが一杯なんでしょ」
【孝彰】
「君ほどじゃないけどね。助かるよ」
【GM/鈴季】
「で、話はこれで終わり。……にしたいところだったけど」
【孝彰】
「珍しいな。君が仕事の話以外を続けようするなんて。あ、まだ話してないから違うかも?」
【GM/鈴季】
「父親として完全無欠の失格者な貴方に気に掛けてもらうことなんてないの」
【孝彰】
「(T_T)」
【GM/鈴季】
「娘のことは私が一から十までしているわ。貴方にしてもらうことなんて何もない」
【孝彰】
「し、仕方ないじゃないか、リストラされちゃったんだからさぁ!?(;_;)」
【GM/鈴季】
「会社がしなければ私が家庭からリストラしてたわよ」
【孝彰】
「 orz 」
【GM/鈴季】
「父親がいなくても娘は立派に育つのよ」
【孝彰】
「琴子と弓子に、母親はいるのかなぁ……(ボソ)」
【GM/鈴季】
「当たり前じゃない」 こいつ言い切った。
【GM/鈴季】
「じゃあそういうわけでよろしくね」
【孝彰】
「心配するなって言われても、心配だよ。こんな父親失格でもさ……でも、君が完全無欠人間じゃなくて良かったよ、本当に」
【GM/鈴季】
「そりゃそうでしょ。完全無欠なら、貴方と子供なんか作ってないわ」
【GM/鈴季】
「若さって怖いわねー」 席を立つ。
【孝彰】
「だから、お陰でまだ君とその周囲の心配ぐらいはできる。死ぬ時は、必ず僕に連絡しろよ?」
【GM/鈴季】
「ええ、勿論」 そして妻……ではなかった、元妻は喫茶店のフロアから出ようとコムリンクで精算を済ませた。
【孝彰】
妻……ではなかった、元妻が出て行ったところで。しまった、という顔をする。
【孝彰】
子ども達にデパートで買っておいた紙袋を渡しそこねていた。彼女がいつもの調子なので、たびたびこうなる。
【孝彰】
仕方ない……と諦めて首をふる。あとで柴田にでも渡しておくとしよう。
【GM】
気付かない女の方も女だよな。ほんと。
【孝彰】
「しかし」
【孝彰】
「”生きて返ってくることができない”ねぇ。あんな弱気な鈴季、初めて見た気がする」
【孝彰】
こちらも席を立つ。樺太に1年から2年……良くも悪くも、忙しくなりそうだ。
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