■会うかどうかもわからん奴ら
元気にしているかいお友達。前々から頼まれていた、樺太における俺が知る限りのパーソナリティーどものリストを送るぜ。お前のようなクズじゃ会うのも面倒なビッグ・ブラザーから、親愛なる便利な隣人までよりどりみどりだ。せいぜい好き勝手に使いな。ああ、礼なんかいらないさ。その代わりにちょいと頼まれてくれればいいんだ。実は早急に入り用なものがあってな、明日にでもこちらに向けて発送してもらいたいんだわ…
兵藤弘庸 人間 男性 56歳
「話があるのなら聞いてやる。互いの利益になるのであれば、手を貸すことも考えよう」
「樺太こそ我が社の生命線。譲るわけにはいかない土地だ」
シアワセ役員。豊原支社長として近頃着任した人物だ。
常に泰然自若の構えを崩さず、克己心の塊が服を着て歩いている見本だと評され、実務能力にも不足は無い。
面白みに欠けるという点を除けばこれといった欠点が見当たらない超人だ。
輸出入、国内、外国間物流事業などの分野を得手としている。
最近までは日本帝国政府の要請によって経産省へと出向していたが、
シアワセへの復帰と共に樺太支社長へと抜擢された。
特筆すべき点があるとすれば、こいつはシアワセの一族じゃない。
だというのにその待遇は専務取締執行役員だ。
姻戚関係に無い身として最高の位まで上り詰めたと言ってもいいだろう。
要するにこのおっさんは、樺太最強のジャパニーズ・ビジネスマンってこった。
腕っ節が強いとかそういう意味じゃないぞ。
マリーナ・アンドレエヴナ・ヤクーニナ エルフ 女性 52歳
「私達だっていつも優しくできるとは限らない。それだけは忘れないで」
イーヴォ役員。豊原支社長として数年来その職務を務め続けているエルフだ。
こいつは樺太におけるメガどものトップとしては最も目立つ。そもそも身形からしてとびきりだ。
身長150センチ程度の小柄な体に、これぞエルフという美貌が詰め込まれている。
ウクライナに生まれたこいつは、欧州戦争の災禍を逃れて少女時代に樺太へとやって来た。
それから苦学を重ねて学問を修め、イーヴォに転職して今の地位を手に入れたんだ。
加えてこいつは金鳳花の私的な友人でもあり、その理念を正しく解して樺太のイーヴォを運営している。
いわば恵まれないメタヒューマン希望の星ってやつ。人気があるのも当然だわな。
まあ外面の良さはともかくとして、こいつもクソッタレなメガの役員には違いない。
何か取引をする時には注意しろ。
このアマ、下着姿までは気前よくひん剥かせてくれるんだが、そこから先が鉄壁だ。
焦らされた挙げ句にうまくない条件でイエスと口を滑らせた早漏野郎は数知れずさ。
物の例えが下品だって? そいつはすまんね。
久我山千鶴 人間 女性 48歳
「人を訪ねてくるのに手土産の一つもないのかい。気の利かない奴だね」
「あんた今あたしの男に色目を使ったね。隠してもわかるんだよ!」
久我山組の女親分。樺太ヤクザの過半を牛耳るクソババアだ。
はっきり言って、樺太で最もパワフルな奴はこいつをおいて他にない。
その力の源の一つが手下として抱えるヤクザ共であり、もう一つが三浜だ。
久我山組が数十年掛けて張り巡らせた蜘蛛の糸は樺太三浜の奥深くまで絡み付いている。
樺太のメガは例外なくどこかしらのマフィアと仲良しだが、三浜は特にズブズブだ。
そしてこの恰幅のいいクソババアはとにかくあらゆる事に対して貪欲だ。
金にはがめつく、色についても底無しで、何人ものガキを囲っている。
珍しいものがお気に入りで、クリッターを大量に飼っているって噂もあるな。
しかしまあこいつは頭の回りがそこまでいいわけじゃない。
危険に対しては敏感だが、それ以外となると他のビッグ・ブラザーに比べりゃ今ひとつだ。
だからといってこいつを騙したり舐めたりするのはお勧めしない。後が怖いからな。
日野川濤二 人間 男性 78歳
「私に譲りたまえ。一番いい値をつけさせてもらおうじゃないか」
こいつは大物だ。個人としては樺太で最も金を持っている。
こいつは投資家だ。自分で企業を経営することは煩わしいと考えている。
こいつは好事家だ。ユニークな魔法の品々のためには手間と金を惜しまない。
こいつは覚醒者だ。いつまでも若々しい外見なのはそのせいだ。
こいつは傍観者だ。どのメガコーポにも肩入れなんか全くしない。
こいつはお友達だ。見て見ぬふりさえできるなら。
バジル・オルムステッド エルフ 男性 年齢不詳
「ティル・タンジェルは夢の国なんかじゃないんだよ。
理想郷なんてどこにもない。ここも案外と住めば都さ」
エルフの中でも特になまっちろいこの青年は豊原エルフ街の顔役だ。
温厚な人柄と柔らかな語り口で同胞からの信頼と尊敬を集めている。
こいつについては謎が多い。だが相応の力を持っているのは確実だ。
何年か前にティル・タンジェルからやって来たこの男は、
豊原に付くなり同胞を約束の地へと亡命させる活動を開始した。
そうは言ってもティル・タンジェルは鎖国体制を敷いている国家だ。
いくらエルフといえどそう簡単に亡命できる場所じゃない。
けれどもこいつは今に至るまで継続的に同胞を亡命させている。
余程太いパイプを持っているのか、あるいは公的機関の人間か。
今のところ真相は闇の中だ。少なくとも俺は知らない。
有坂時雨 人間 男性 43歳
「オーケーお友達、欲しいものはくれてやる。だから仕事を請けてくれ」
こいつは樺太に根付いているフィクサーだ。
フィクサーとして定番のお仕事には一通り手を染めている。
仕事に金に情報に装備、もちろん友達だって紹介してくれるだろう。
中でもこいつが得意なのは企業からランナーへの仕事の仲介だ。
元々メガコーポに勤めていたこいつは企業の流儀を一から十まで知っている。
もしクライアントが望めば裏付けの取れる領収書も切ってくれるというサービスぶりだ。
だから企業のジョンソンどもには大人気で、ランナーも仕事が集まるこいつをアテにする。
見かけは普通のおっさんだ。スーツも着ればジャケットも着る。
それほどファンキーな服装をすることはないな。ちなみに愛称はグレさんだ。
あん? あんまり怖そうな人じゃないなって?
そりゃそうだ。誰だって友達には優しいもんだろ。
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最終更新:2008年01月15日 21:03