「れいにー☆ちゃんねる」 ID:gOunfG > 10氏

僕の名は白石稔、地球は狙われて――いや違う、駆け出しの芸能人だ。
今はらっきー☆ちゃんねるという最近TV進出した番組のアシスタントとしてTV、ラジオに出演している。
収録のない日は某カレー屋や焼き肉店でバイトをしているが今それはどうでもいい話だ。
今日はらっきー☆ちゃんねるの収録の日なのでバイトもない。これから電車に乗ってスタジオに向かう所だ。
空を見上げる――――。残念ながら今日は曇りだ、太陽は姿を隠してしまっている。その割に蒸し暑いのは何だか頂けない。

駅の改札を抜けてホームに立つ。時間は昼前なのでラッシュは避けられた。運が良ければ座れそうだ。
電光掲示板を確認してみると、電車は出発した直後のようで次の電車までに3分ほどある。


今にも雨粒の落ちてきそうな空を見上げながらこれからの収録のことを考える。
僕の主な役目は司会の小神あきら様のサポートなのだが、あきら様は非常に自由奔放なお方なのでサポートに回るのが
大変難しい。僕の力不足なのだろうが、あきら様を満足できたことはあまりないのが悔しいところだ。
今日は一体どんな無茶振りをなさるおつもりなのだろうか、今から考えると頭が痛い。思わずため息をついてしまう。

「・・・はぁ」
「あれれ~白石さん、ため息なんかつくと幸せが逃げちゃいますよ?」
「うおわっ!!」

驚いた、声のした方を見ると帽子を目深に被った幼女・・・あきら様がいらっしゃった。
「ああああああ、あきら様っ!?」
「声でけーんだよ!」
「おぐっ」
脛を蹴っ飛ばされた、本気じゃないだろうけど地味に痛い。
「全く、収録前に集まられたら遅刻しちゃうでしょ?TVとか本編にも出てんだからいつまでも駆け出し気分じゃ、
この先思いやられるわよ」
「はぁ、スイマセン」
「気の抜けた返事ねぇ、若いんだからもうちょっとシャンとしなさい!」
「ハ、ハイィッ!」
あきら様は朝から元気だ。ていうか元気すぎてこっちの胃が痛い。
「ま、とりあえずスタジオまで行こっか~。注目浴びると困るから、あんまり気さくに話し掛けないように」
何だかギャルゲーみたいなセリフだな、と思いながら「わかりました」と答えておいた。

天候不良の影響も無く定刻通りに電車は到着した。
まだ冷房は入っていないようで車内はそれなりの気温と密度が同居していた。
あきら様の方へ目をやると、暑さに参っているのか上着の胸元に指を引っ掛けて風を送り込んでいる。
「はしたないですよ!」と言おうかと思ったがあんまり話し掛けるなと言われてるので止めておいた。

そのまま電車は駅に到着し、駅を出てみると外は見事に土砂降りだった。
「うわ、雨か・・・。タクシーでも使うか面倒くさい。白石ー、アンタはどうすんの?」
「僕は折り畳み傘も持って来てますから大丈夫ですよ・・・っと、ホラ」
鞄から傘を出すと、いっしょにスケジュール帳まで落っこちた。
「何これスケジュール帳?アンタいちいち細かいのねー・・・」
あきら様は僕のスケジュール帳をパラパラとめくっている。何か恥ずかしいから返してもらおう。
「あのーあきら様?拾ってくださるのはありがたいんですが返していただけると・・・」
「あのさー、このメモ欄のとこのネタみたいなの何?」

メモ欄には『自販機でジュースが当たったと思ったら500円だった』
『朝起きて携帯が無いと思ったら手に握っていた』
とか書いてある。
「ああそれはアドリブで話す時のネタになればいいなーと思って。でも収録のときは緊張して忘れちゃうんですよね、あはは」
「あんた・・・何か収録以外で見ると初々しいわねー」
あきら様はあきれたような顔をしているが、口元は笑っている。怒ってはいないようだ、良かった。
「はい、ネタ帳。そんな大事なもんならもっと大事にしなさいよ」
「はぁ、すいません。あ、じゃあ僕は行きますね。またスタジオで」
「ちょっと待ちなさい白石。私も歩いてくわ」
「へ、歩いてくって・・・傘はどうするんですか?」
「もうちょっと空気読みなさいよー、ここは相合傘のフラグでしょ?」
「あ、相合傘ですか!?あきら様と!?」
「なぁに?不満な訳?」
「いえ滅相も無い!!ありがたく傘を差ささせていただきます!!」
「よろしい。この機会に収録前後じゃ言えない事も色々教えたげるわ」

そんな訳であきら様と同じ傘に入りながらスタジオまで向かった。色々話す(暴露と言ったほうがいいのか)あきら様はとても楽しそうで
聞いててこっちも為になったし、非常に面白かった。

雨はあんまり好きではなかったけど、この一件から雨も悪くないな、と思えるようになった。



この相合傘をファンに写真で撮られ、ネット上で話題になってしまいあきら様に吊るし上げられたのはまた別の話だ。

最終更新:2007年06月15日 22:27
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