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メルトダウンにかんする報道

福島第一原発での事故当初、メルトダウンの可能性が海外メディアでは報じられたが、国内大手メディアはこれをまったく伝えずむしろ否定していた--上杉氏はこれまで著書や講演、ラジオをつうじて一貫してこう述べてきた。これは「放射能報道は無かった」論とならんで、原発事故報道をめぐる上杉氏の主張の中核をなしている。はたして上杉氏の言う通りだったのか。これまでの上杉氏の発言と、原発事故当初の全国紙の記事とをつきあわせて検証した。

目次

上杉氏の著書・記事


<以下、引用>
震災発生以来、最悪の事態を想定して、各国政府の方針や海外メディアの論調をソースを明示しながら、その可能性に触れてきた筆者への評価は、「デマを飛ばすインチキ記者」という匿名の批判に集約される。

とくに、福島第一原子力発電所の事故について、「水素爆発」「人的被害」「80キロメートル圏外へ退避勧告」「農作物被害」「首都への放射能汚染」「 メルトダウン 」などの可能性に触れた途端、それは頂点に達した。
『国家の恥 一億総洗脳化の真実』(16-17頁)
<以下、引用>
それまでの政府の対応は酷かった。菅首相と枝野官房長官などの政治家は、東電と役人の嘘に簡単にだまされ、結果として「安全デマ」という誤情報を国民に流しまくっていたのだ。

「格納容器は健全に守られている」
メルトダウンはしていない
「放射能の外部放出はない」〔※1〕
「ただちに健康被害はない」
「避難の必要はない」
「放射能の海洋流失はない」〔※2〕

こうした政府の発表を大手メディアが無批判に垂れ流すことで、放射能被害が広がったとしたら、あまりに悲しいことではないか。
『国家の恥 一億総洗脳化の真実』(56-57頁)
<以下、引用>
大震災でも政府・東電と一体化
やはり「広報機関」となった大手メディア

3・11からの100日間、大手メディアの報道は機能しないどころか、逆機能を果たしてしまった。

メルトダウンはしていない
「格納容器は健全に守られている」
「放射能の外部放出はない」〔※〕
「チェルノブイリのような大事故には絶対にならない」
「ただちに人体に影響の出るものではない」
「仮に3号炉が水素爆発しても大きな問題はない」
「放射能汚染水は海洋で拡散され、被害が及ぶことはない」
「プルトニウムは安全だ」

言わずもがなだが、こうした報道は結果として誤報である。誤報ならばまだよかったかもしれない。それはもはや「デマ」であり「風評」である。

何もしなければ害はないものの、大手メディアは、政府・東電と一体化し、いつものようにその広報機関としての働きを強化させたため、結果としてこのような「デマ」や「風評」を流す犯罪行為に加担してしまったのである。
『国家の恥 一億総洗脳化の真実』(59-60頁)
<以下、引用>
たとえば燃料棒のメルトダウンについては、3月半ばには海外メディア、フリーランスの記者たちのほとんどが指摘していたことだ。しかし、当初、東電も政府も「メルトダウン」の事実を一切認めていなかった。既存メディアが「3月の事故発生直後にメルトダウンが起きていた」事実を報じたのは、政府が認めた5月になってからである。
『自由報道協会が追った3.11』14頁
<以下、引用>
たとえばNHKの報道は枝野幸男官房長官の言葉を繰り返し流しました。

「格納容器は健全に守られています。逃げる必要はありません」
メルトダウンはしていません
そして原発事故発生直後、避難指示が出たのは原発から2キロ圏内でした。
「2キロ、3キロの避難区域に入らなければ大丈夫です。ご安心ください」
「デマには気をつけてください」
「食べ物も安全です。飲み水も安全です」
「放射能が外に出ることはありません」〔※〕
新聞・テレビはこうした報道を朝から晩まで繰り返していました。
『大手メディアが隠す ニュースにならなかった危ない真実』(22-23頁)
<以下、引用>
当然ながら、物理の法則は世界共通です。そのため世界中の新聞・メディアは「空焚き状態にあるのなら、少なくとも数時間でメルトダウンが始まる」という記事を書きました。私も東京FMの特別番組の中で「 ワシントン・ポストはメルトダウンの可能性を報じています 」とソースを明らかにして伝えました。 ところがその瞬間、日本の多くの知識人たちは一斉に私のことを「デマ野郎」扱いし始めたのです
『大手メディアが隠す ニュースにならなかった危ない真実』(33-34頁)
<以下、引用>
私は当初から「メルトダウン」を疑い、追及してきました。しかし、日本ではそれを追及した側が、よってたかって犯罪者あつかいされる のですから、驚くばかりです。
メディアはこれまでどおり、全部ひっくるめて無謬主義です。事実を隠蔽するためには事実を枉げても自分たちは正しいと主張しています。そして異論に対しては、デマ呼ばわりして徹底的に排除する。そして、一元的な歪んだ情報を守るために、結果としてどうなるかというと、そのときには「安全でした、大丈夫だった」といっているにもかかわらず、間違えた情報が出ると整合性がつかないので、それはなかったことにするんです。
『メディアと原発の不都合な真実』(85頁)


検証結果:炉心溶融(メルトダウン)は事故発生時に各紙で報じられている。

  • 上杉氏は、 大手メディアはメルトダウンの可能性を否定した、或いは「メルトダウンしていません」と報じた 、と述べているが、実際は各紙1面トップで報じられている。
※1大手メディアは「放射能は飛んでいません」と報じていた、という上杉氏の説については『放射能をめぐる報道』を参照。
※2放射性物質を含む汚染水の海洋流出にかんしては『4月4日汚染水放出の報道』を参照。
※3プルトニウムについては『プルトニウムの報道』、『プルトニウムにかんする質問』を参照。


1.各紙における炉心溶融(メルトダウン)の報道

朝日新聞3月13日1面 『第一1号機 炉心溶融、建屋損傷』

朝日新聞3月13日号外 「『炉心溶融(メルトダウン)』が起きたおそれが出た。」

読売新聞3月12日号外 『福島第一 炉心溶融か 爆発』

読売新聞3月13日1面 『第一・1号機 炉心溶融の恐れ』

デイリー・ヨミウリ3月13日1面 『原子炉のメルトダウンの恐れ』

毎日新聞3月13日1面 『国内初の炉心溶融』

毎日新聞3月13日3面 『福島第1 炉心溶融』

日経新聞3月13日1面 『原発の炉心溶融』

日経新聞3月13日3面 『福島第一で炉心溶融』

読売新聞 3月16日 朝刊3面 「『炉心溶融(メルトダウン)』に至る危機に直面している。」


2.上杉氏はメルトダウンの可能性をいち早く伝えていたのか

<以下引用>
今後、状況がどう推移するかは簡単に予想できる。・・・
そのとき 「自分がはじめてメルトダウンを指摘したと主張するジャーナリスト がいたが、じつはわれわれも二0一一年春の段階できちんとメルトダウンを指摘していた」と臆面もなく主張する。・・・
こうして彼らの失敗は人々の脳裏から消えていくのである。
『新聞・テレビはなぜ平気で「ウソ」をつくのか』(69頁)

上杉氏は『週刊SPA!』2012年3月20日号(4頁)で「 おそらく、日本でもっとも早くメルトダウンの可能性を報じたのは筆者のツイートだったはずだ 」と書き、またこのまとめにも見られるように、上杉氏の指摘が各社報道より早かったかのように述べているツイートを自らRTしている。さらに自らのブログでは「 メルトダウンの可能性を、ジャーナリストとして誰もよりも早く言い続けたため、5年にわたりアンフェアなバッシングを受けてきました 」と書いている。しかし実際は下記にみるように、 上杉氏は政府機関の発表をそのまま報じただけであり、それは初めてでもなければ、他の報道機関より早くもなかった 。

  • 上杉氏のツイート 2011年03月12日 14時28分02秒 (※埋め込みツイートは仕様でグリニッチ時刻)

  • 各メディアによる報道(※いずれも上杉氏のツイートより前に報じられている)
・朝日新聞デジタル「福島第一原発1号機、セシウム検出 炉心溶融か」2011年3月12日 14時19分
・読売オンライン「福島第一原発1号機で炉心溶融の可能性3月12日 14時18分
・時事通信「福島第1原発で炉心溶融か=付近でセシウム検出3月12日 14時15分
・日経電子版「福島第1原発1号機、炉心溶融の可能性 保安院発表 周辺地域からセシウム検出3月12日 14時18分
・ロイター(時事通信)" Japan nuclear authorities say high possibility of meltdown at Fukushima Daiichi No. 1 reactor" 3月12日 14時16分 (※仕様でグリニッチ時刻)


  • 上杉氏は自らツイートするより前に、他の記者が保安院発表をツイートしたものをRTしている(以下の赤枠。下から時間順)。

上杉氏は後になってから、保安院と政府、東京電力の他に「科学者への取材の結果」としてメルトダウンの可能性を指摘したと言っている(※参照)。しかし実際には上記のように、上杉氏はたんに政府機関の発表を、マスメディアの報道や他のジャーナリストらより 後に 述べたにすぎない。

上杉氏は、他の記者がメルトダウンについて報じたツイートをみずからRTしているのだから、自分が「 日本でもっとも早くメルトダウンの可能性を報じ 」てなどいなかった事を初めから承知している筈である。

このように、上杉氏は、政府機関による発表を各メディアの報道より後にツイートした上で、「政府もメディアもメルトダウンを全否定した」と述べている。


3.フル・メルトダウンは国内メディアが独自に持ちだした理屈なのか

朝日新聞3月13日号外1面

上杉氏は、 国内メディアは「すべての意味においてメルトダウンを否定していた」 と述べている。

上杉氏の言うことが本当であれば、事故当初の各紙はすべて存在していないことになるだろう。

また、上杉氏は以下のように、国内メディアは後になってフル・メルトダウン(全炉心溶融)という言葉を持ちだすことでメルトダウンを否定したと述べている。

<以下引用>
では、一連の事象を既存メディアはどう報じていたか。
「全炉心溶融」という、これまでなかった言葉を使いはじめ、「メルトダウンとは全炉心溶融のこと」であり、 「炉心溶融はしているがメルトダウンはしていない」というロジック で、結果的に官邸の肩をもちつづけたのである。
『新聞・テレビはなぜ平気で「ウソ」をつくのか』(67-68頁)
<以下、引用>
〔新聞が〕私たちも震災発生直後から「炉心溶融」と言ってメルトダウンを発表してたと言うから、「それはちょっと違うんじゃないか、あなたたち否定したじゃないか」ということで抗議したわけです。そしたらどうなったかというと、次の日の新聞から、テレビもそうですが、「全炉心溶融が始まった」と。「全」が付いたんですね。で、我々は全炉心溶融をいま始まったと、 炉心溶融という言葉はメルトダウンとは違うんです。「フル・メルトダウン」という言葉が出てくるんです。 すごいなあと。で、一応念のため、設計士とかですね、科学者とか、それこそ小出さんとか武田さんとかにも訊いたんです、ラジオで。「あの、 フル・メルトダウンという言葉はあるんですか?」、「ありません」、終わり 。「そうか」と思ったら、その翌々日の朝日新聞に用語解説が載ったんですね。「我々は全炉心溶融という言葉をこの数日使ってきましたが、用語統制のために、炉心溶融ということに統一します」と。つまりこれがメディアのやり方なんです。
『創』2011年11月26日「原発報道に現れたメディアの病弊」34頁

上杉氏によれば「フル・メルトダウン」という言葉は無いということである。しかし当時のニューヨーク・タイムズ紙には以下の解説が見られる。

<以下訳出>
原子力の専門家の話では、原子力発電所の部分的なメルトダウンと フル・メルトダウン とでは、損傷の程度においても、放射能の潜在的な放出においても、非常に大きな違いがある。

部分的なメルトダウンというのは、日本の北東部にある二つの原子炉で週末にかけて起きたと疑われているものである。 これは専門家によれぱ、必ずしも炉心のウラン燃料が溶けたことを意味しない。燃料棒の一部が冷却水から露出したために破損して放射性物質が放出されるというように、燃料棒の損傷だけで済むばあいもある。

しかし フル・メルトダウン というのは、全ての冷却水が失われて燃料棒が完全に露出すると数時間以内におきるもので、このばあい溶融は間違いなくおきており、数千もの燃料ペレットが原子炉の底に落ちて熱し、華氏数千度の溶けた溜まりになる。
A Look at the Mechanics of a Partial Meltdown. By HENRY FOUNTAIN, Published: March 13, 2011

このように海外紙でもフル・メルトダウンが partial meltdown(部分溶融)との対比で用いられており、ニューヨーク・タイムズは3月12日時点では「原発問題は深刻だがスリーマイル島で起きた部分炉心溶融(partial core meltdown)のような大惨事の事態には程遠い」という分析を記事にしている(Japan Orders Evacuation Near 2nd Nuclear Plant. By MATTHEW L. WALD. 2011.3.11)。

また上杉氏自身、自らのメルマガの中で「 フルメルトダウン(炉心融解) は、緊急対応的な海水(現在は真水)の注入によってどうにか止められているにすぎない。」(上杉隆の東京脱力メールマガジン Vol.050『 提言:海洋汚染犯罪国家にならないために 』 2011年4月3日)と述べ、同じ用語を使って状況説明をしている。


参考




更新
2013.4.18 フル・メルトダウンに関する上杉氏メルマガからの引用
2013.5.29 週刊SPA! 2012年3月20日号からの引用を追加